3-8
「スマン島。力強かったな、大丈夫か?」
「大丈夫、大丈夫。」
戻らない視界に、両目を手で擦ると、横から伸びてきた別の腕に、その手を止められる。
「眼が赤くなる。目薬にしなさい。」
ぐい、と顎を掴まれ、上をむかされたと思ったら、目に滴が降ってきた。
反射的に目を瞬く。
お、視界がクリアーに。
正面で、目薬片手に心配そうな顔をした春兄の、その向こう。
先ほどの日本人形美少年と、その背後にじっと佇む、背の高い男の姿が見えた。
一重の切れ長の瞳に、きっちり真ん中で分けられた黒髪。
制服を、これが見本だ!といわんばかりにきっちり着込んだ彼は、前にいる美少年と対になるように佇んでいて。
なんだろ。・・・武士と姫?みたいな?
なんかこう・・・”付き従う”みたいな?
雰囲気が、ある。
・・・・・・あるんだけど。
僕は首を傾げた。
「島、前にいる姫さんみたいのが、生徒会会長の有栖川巴(アリスガワトモエ)。その後ろでガードマンみたく突っ立ってんのが、副会長の井村重実(イムラシゲザネ)だ。」
夏兄が面倒くさそうに、机に頬付きながら二人を指さした。
てか、生徒会長と副会長かYO!!
なんという!!大物と知り合っちゃったよ!
僕の静かでまったり学園生活が、全力で逃げ出し始めた・・・!本格的に!
思わぬ展開に、思わずため息をついた僕に、会長がはじけるように笑い出した。
「自己紹介してため息つかれたのははじめてだ!島、だっけ?面白いね、君。」
「呼び捨てにすんじゃねぇよ」
「島、呼び捨てにしていいよね?」
舌打ちする夏兄を見事にシカトしてのけ。
にっこりと満面の笑みを向けられちゃったら、僕、頷く以外の選択肢はありますかね。
ないですよね、うん。
目に見えない何か強大な力によって、縦に動かされた僕の頭ですが、夏兄の機嫌が悪くなっているのを、背中でばんばん感じます。
そんでもって、春兄も笑顔でこっちをみてるんだけど、目が笑ってない。
笑ってないよ春兄!!
内心冷や汗をかいてきたそんな時、井村副会長が僕をみて首を傾げた。
「・・・島?お前、一年の市ヶ谷島か?」
「え!?確かに、僕は市ヶ谷島ですけど・・・」
なんで僕のフルネーム知ってんだ、この人。
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