3-7
「弟くん?」
呼ばれて、反射的に顔をあげた。
てか、弟って僕だよな?あれ?もしかして夏兄?
夏兄と春兄は、春兄が兄ってことになってるんだよね。
確認しようと、その人へ顔を向けようとするも、姿を確認する前に、大きな手に視界を塞がれて。
「ちょ、夏兄?」
「はーる。誰もこねぇんじゃなかったのかよ。」
「・・・その予定だったんだけど、ね」
「まるで邪魔者扱いだねぇ」
クスクスと小さく、けれど存在感のある笑い声が部屋に響く。
耳ざわりのいい、綺麗な声だなぁ。
「巴、」
その笑い声に、咎めるような声が被った。
今の笑い声の主と違って、低く通る声だ。美声だ美声。
腰にクる系の美声だね。よ!女泣かせ!
って、この声の持ち主は誰ですかね。
さっきの日本人形美少年しか見えてなかったから、わからないよー。
見るためには、この視界を塞ぐ手がじゃまですしね。
みえない。夏兄みえないよー。みたいよー。
僕は、目を覆う手を両手で掴んだ。
「夏兄、ちょ、手ぇ」
「だぁーめ。」
「なんで!」
「島が好きそうな顔してんだよ。ヤツは。」
「全くもってそのとおり!もっとみたい!」
「益々見せたくないよねぇ」
夏兄と春兄の声が交互に聞こえて、僕の眼を覆う夏兄の手の力が強くなる。
い、痛い!痛い!
目が!目が飛び出る!!
「神埼、手を放してやれ。それじゃぁ痛いだろうに。」
痛みに暴れた僕に気付いたのだろう。
さっきの低い声の人が、溜息交じりに夏兄に言った。
おぉ!貴方は救いの神か!
気が利くって大切だよね!
その言葉に反応したように、僕の目を覆っていた夏兄の手がビクリと震え。
すぐに、そっと離される。
うぅ、視界がぼんやりするぜ・・・。
ぼんやりとする視界の中で、夏兄が僕の顔を覗き込んでくるのがわかった。
相変わらずの馬鹿力め!
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