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3-2

「しぃーま。」

・・・んん。なんか今、呼ばれたような気がする。
気がするけど・・・・眠い・・・まだ僕眠いよパトラッシュ・・・。
寝かせてくれ・・・

「春!春!島がむにゃむにゃ言ってる・・・!このクセ治ってねぇんだな・・・あああカワイイ」

ムニャムニャ?なんだ、むにゃむにゃって・・・
ああ、これちゃんとしゃべれてないのか・・・半分寝てるとき、うまくしゃべれないからな、僕・・・
いいから、眠い・・・うぅ・・・でもなんか明るい・・・暗くしてくれ・・・

「夏、起こすのか、寝かせとくのかどっちなんだ。島が魘されてるぞ。」
「この必死な感じがカワイイんじゃねぇか。ククク、眉間にしわ寄せてる」

遠くで、ため息が聞こえて、眉間になでられる感触を感じた。
次いで、緩く肩をゆすられて。
うぅ・・・だめですか、寝かせてもらえませんか・・・

「しぃーま、起きろ。もう昼だぞ。」
「起きないと、チューしちまうぞ。」

チューぐらいどんとこいだ。それより寝かせてくれ・・・。
うんうん唸っていると、右の頬に何か柔らかいものが触れた。次いで同じ感触が左の頬にも。
何?なんだ今のは。やわっこい・・・ねむい・・・

「ああああたまらん」
「・・・この無防備さは、なんかの苦行か何かなのかな」
「そんなこと言ったら、俺らずっと修業中だぜ」
「それもそうか」
「なんかもう、さ。いいか、食っても。そろそろ我慢の限界だぞ」
「・・・まだ早いんじゃないか?」
「もう島も高校生だぜ?もう、いいんじゃねぇかなぁ・・・先に誰かに食われたら、俺はソイツを殺すぞ」
「鷺ノ宮にいると思うと、不安で仕方ないものな。・・・なんで来ちゃったかな」
「でも近くにいられていいじゃねぇか。島がいなかった2年間・・・辛かった・・・!」

何の話をしているのかはわからないけど、ううう・・・
煩いぞ二人とも!

「うぅ・・・なんだよもー」
「お。ハヨ島」
「おはよう島。」

目を開いた先には、同じ顔が二つ。
その顔は、パーツは全く同じなのにちょっとずつ雰囲気が違うせいで、二人を全く違う人間に見せていて。
どっちにしろ、整った顔には間違いないんだけど。

モカ色の髪に、紅茶色の瞳。
どちらにも、左目の下に泣きぼくろがあって、それがすごく色っぽい。
パッと見て甘そうな外見なのだが、その薄い唇がゆがめられると、途端に酷薄な雰囲気が漂うことを僕は知っている。

そしてそのどっちも、僕には見慣れた顔だ。
そう、この二人こそが僕の助っ人の”兄ちゃん”こと、神崎春一(カンザキハルイチ)と神崎夏一(ナツイチ)。
この鷺ノ宮学園では知らない人はいない、一卵性双生児である。

「はよー、春兄、夏兄ぃー。」

朝の挨拶と一緒に向けられた華やかな笑顔も、二つ揃うと眩しいなぁオイ。
蕩けるような笑顔を向けられて、僕なんだか、朝からお姫様気分・・・☆
って、兄ちゃんそれは女の子にやってください。僕にやるとか不毛すぎる。

「あああ、まだねむ・・・い・・・」
「こらこら。目ぇ開けたんなら、起きろって。また、寝過ぎで頭痛くなンぞ」

自慢じゃないが、僕の寝起きは酷い。
脳みそがぐらぐら揺れているような感覚に身を任せ、下がる瞼に従おうとするも、夏兄が軽く頬を叩いてくる。
うぅ、眠いもんは眠いんだ・・・兄ちゃんどいてくれ・・・足も邪魔・・・って足?

・・・ん?てかなんで僕、いつの間に夏兄に抱え込まれてんの?

確かに昨日から学園が小連休に入り、一般生徒に見とがめられないから部屋に遊びに来い、って兄ちゃんズに言われて。
友達がみんな帰省してしまってちょっとさびしい思いをしていた僕は、その申し出に喜び勇んで遊びに来て、そしてそのまま泊まったけど。
兄ちゃんズは同室なので、兄ちゃんたちはそれぞれの個室で寝て、僕はリビングのソファで寝たよな。


なんで、ソファで寝てる僕の下に、夏兄がいるんですかね。


「なんで、夏兄、僕の下にいるの」
「なんとなく?」
「・・・・・・・・ふーん」

突っ込むまい。・・・僕は、突っ込まないぞ!

「あっ、冷たい島。無視すんなよ。」
「春兄ーごはんー」
「もう出来てるよ。顔洗ってきなさい。」
「はーい。」

泣きまねをする夏兄をほっといて僕はソファから降り、洗面所に向かったのであった。
春兄のご飯、美味しいから好きだ。ヤッター。

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