3-1 緑萌える5月。 日差しも緩やかに、風も気持ちいいこの時期。 鷺ノ宮学園は、小連休中です。 そもそも、全寮制のこの学園。 色々と特殊な学園色もあり、高等部からの入学生は、早々と疲れ果てるのが学園の通例らしく。 要するに、ホームシックになっちゃうんだな。これが。 オイオイ高校男子が何を・・・と、言うなかれ。 鷺ノ宮に来る学生のほとんどは、イイトコの坊ちゃんなんです。 今までずっとチヤホヤされて過ごしてきた彼らにとって、一般生徒として過ごすのは、中々の苦痛なのである。 まぁ、一般庶民の僕にはわからないけどね。 そんなこんなで鷺ノ宮学園では、高校入学して早々、精神的にへばってしまっているそんな坊っちゃんたちのために、ちょっとした帰省の機会を、この時期に設けているのである。 ちなみに今の時期は5月の中旬。 GWは普通授業にして、この時期にまとめて休みを取ってしまう。 この小連休は10日なんだけれども、その間は基本的に生徒は帰省しなければならない。 そう。強制なんです。 繰り返すようだけど、ここの学園は特殊な場所だから、何らかの理由で帰りたくても帰れない子が出てくるワケだ。 そんな子に帰る理由を与えるというのが、強制帰省の理由なんだけど・・・。 まぁ、ここで一回強制的に帰省させるっていうのも、なんだかなぁという話。 この強制帰省の本当の理由は、一回帰省させて、親と今後在学を続けるか相談できるようにしているんじゃないか、と僕は思っている。 三度目ですけど、ほら、ここっていろいろありますからね。 実際、この連休が終わっても、実家から帰ってこない生徒は少なくないらしい。 まぁ、逃げ道は必要だよね。 って、逃げ道が必要な学園ってそもそもどうなの。 ちなみに、この強制帰省。 ある条件に当てはまる人間は、除かれる。 一つ目、生徒会役員であること。 二つ目、風紀委員であること。 三つ目、文化・運動部部長であること。 この三つは、つまり仕事が多い役員であるということだ。 学校業務にかかわる生徒は、そもそも途中で逃げ出すような人間じゃないことが多いしね。 僕は全く知らないから、よくわからないけどさ。 なので、帰らなくてもオーケーと。 そしてもう最後の条件として。 帰る場所がない、こと。 なーんだか、傷つく言い方だよねぇ。 なんかこう、もうちょっと言い方あると思わない!? ここに入ってしまう人間としては、ちょっと物申したい! 別に、天涯孤独とかそんな背景持ってないんだけど僕! まぁ、ここにはいる人の大体は、そんな悲しい背景を持ってるらしいんですけどね。 しょーもない理由で居残ってすいません。 そうです。僕はここに入るのです。 皆さん覚えていらっしゃいますでしょうか、僕がここ、鷺ノ宮に来た理由を。 そうなのです。 僕の実家、売っ払っちゃってんだよね。 ありてい言えば、今の僕の実家は親が出向している外国のどっかにあるわけで。 まぁ帰省できるわけがない。っていうか、できなくないけどさすがに海外はな・・・。 と、いうわけで。 今、僕は、ガランと人が少なくなった鷺ノ宮学園で、10日間過ごすことになりました。 うっうっ・・・一実もアザレも東山もいなくてさみしいよぉ〜!! [次へ#] [戻る] |