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2-29
ヒュッと、アザレの喉から息をのんだ音が聞こえた。
アザレの瞳から、目をそらさず話し続ける。

「こんなことで嫌いになんかならないから。」
「だって、アザレが悪くないのは、僕が知ってる。今回だって、アザレは何も悪くない」
「だから、」


「だからもうこんなこと、二度とするな」


僕のために、危険な目に会ったって?
冗談じゃない。勘弁してほしい。
僕は、僕一人を守るくらいなら、ギリギリなんとか出来なくない。
けれど、周りの人まで守れると思えるほど、うぬぼれちゃいないんだ。
友達が、僕のせいで危険な目に会うくらいなら。
僕があった方が、マシだ。

合わせたスカイブルーの瞳が、ゆがむ。

そして突然。

アザレに力いっぱい体を突き飛ばされて。
勢い、僕の体は後ろにひっくり返り。
そしておもむろに、アザレはひっくり返った僕の体の上に、馬乗りに乗り上げてきた。
アザレの突然の行動に、馬鹿みたいに口を開いてアザレを見つめる僕の襟足を、ガツリと両手で掴んで。

思いきり、振り回された。

「バカ!!!バカ島!!!」
「ちょ、え、待っ」
「わかってない!ぜんっぜんわかってない!!」
「アザレ、落ち着」
「何が知ってるだ!何が二度とするなだ!!僕は!」


「僕は、ただ、お前が傷ついたのが嫌だった、だけなんだよ・・・!」


ぱたぱたと、僕の頬にアザレの涙が落ちてくる。
真下からアザレの顔を見るのは初めてで、状況も忘れてアザレの顔に魅入った。

奇麗な顔って言うのは、泣いても奇麗なんだよなぁ。

落ちてくる涙をぬぐおうと、自然と手がアザレの頬に触れた。
その瞬間。

ガチャ。

「はいはーい。そこまでにしてくださーい。っていうか、島さん腹にアザ出来てますよねー」

ドアが開く音とともに聞こえてきたのは、絶対零度の一実の声。
って、ん?
そうだ。
腹。

「・・・・・っ!!!」

自覚したとたんに、アザレが乗っている為に圧迫されている患部からの痛みが、頭まで突き抜けた。
余りの痛みに声も出せないで悶えている僕に、アザレが慌てて立ち退こうとする。
が、それより一足先に、アザレの体が浮いて。
そしてそのまま、床に投げ出された。

「うわ、痛ぁ!!ちょ、なにすんだよ、東山!」
「邪魔」

床に転がりつつ喚くアザレの声を背に、東山が僕の目の前に立つ。
東山のヤツ・・・アザレの首根っこ掴んで投げ捨てたよ・・・。
アザレは、猫か何かか。
わからんでもないけど。

そしてそのまま、東山の腕が僕の背中と膝に回り。
うん、まぁ本日3度目ですからね。
この浮遊感と安定感と羞恥心にも慣れました。慣れましたとも。

慣れたからいいってもんでもないけどね!
いや、助かってるんですけど!
でも男の子としての大事な何かが奪われていく、そんな気がするんだよね!島さん!!

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