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2−12


カウンターの向こう側から、無言で見下ろしてくる東山を、冷蔵庫を背にやっぱり無言で見上げる僕。
無言の攻防がしばし続いた。
なんか、草食動物的な危険を感じて、目を逸らせない…!

が、ふと後ろ手に付いた手に冷気が触れて、僕は冷蔵庫を開けっ放しにしていたことに気付いた。

ぎゃ!電気代が勿体ない!

慌てて後ろを向いて、冷蔵庫を閉めた瞬間、声が聞こえた。

「食った」
「…は?」

東山。しゃべってくれたのはいいが、意味がわからない。
僕は再び振り向いて、ぽかんと口を開いて、東山を見上げた。
東山は、そんな僕から目を逸らし、いらだたしげに舌打ちをする。

「だから、」
「うん。」
「俺が、食ったんだよ」
「あー…、何を、」

あ、待て待て僕。
今、僕は何を探してた?
もしかして、

「肉じゃが?」

呟いた僕の言葉に、東山は再び僕と目を合わせ、小さく頷いた。

東山が、僕の肉じゃがを食べた?

あ、まずい。
とてつもなく頬が緩む。
ここで笑ったりなんかしたら、東山の機嫌が悪くなるぞ僕。顔戻せー戻せー。

だめだ。
なんで食ったのか、とか、僕の夕飯が無くなった、とか。
そんなことはどうでもよくなった。
ただ。
ただひたすら。


なんか、嬉しい。



「そっか」



結局、僕の顔が戻っていたかは、鏡を見てないから僕にはわからないんだけど、東山が怒らなかったから、多分大丈夫だったろんだろうと思う。
東山は、口をひん曲げて不機嫌そうな表情を浮かべてたけどな。
そして東山は、何か言いたげに口を小さく開いたものの、結局何も言わずにまた口を閉じて、部屋に戻っていった。


僕はその背を見送りながら、緩む頬に手をあてた。
あーなんかすごい嬉しいなぁ!
これはアレだ。
つんつんしてる野良猫が、エサ食べてくれた気分だ!
あーときめく…!胸がきゅんきゅんするぜー!
覚悟しろ東山!
お前は僕のブリーダー魂に、火を付けた…!


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