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2-10

side:アザレ

島は、僕が頼めば何でもやってくれる。
なんだってわがままを聞いてくれる。
しかも笑顔で。

正直、がっかりした。

自分でそう仕向けたんだけどさ。
島は、今までの取巻きとは違うと思った。
違うと思ったのに。

結局、同じか。

結局、今までのヤツラと一緒だったのかって。
僕のご機嫌をうかがって、それで僕に取り入ろうとしてるに違いないと思った。
だってそうじゃなきゃ、あんな僕のわがまま聞く必要ないもの。

けど、そんな僕の考えを、島は裏切る。

媚びない。あの独特な態度がない。
だからといって、僕をどうにかしようとしている様子もない。
伊達に、鷺ノ宮で長年過ごしてないんだ。
そういう態度くらい結構見ぬけないと、無事な体でここまで過ごしてない。
島はいくらだっても、僕を害する様子を微塵も見せなかった。
ただ、僕の高飛車なわがままを、ニコニコと聞くだけ。

わかんない。何考えてるんだよ。
ただ、バカなだけなの?。
それとも、僕にわからないよう隠しているだけなの?
いや、バカなだけじゃないはずだ。
だって、ヤツがいつもそばにいる。

僕は、無言で横を歩く、無表情な男の顔を横目で見た。


日吉一実。
島と同じく特待生入学だが、顔はそれなりに整っていて、頭の回転が恐ろしく速い。
特待生の癖にクラス委員に選ばれて、その手腕は一般生に文句を言わせない完璧さ。

そして。
なぜか、いつも島の隣にいる。

いや、島が隣にいるだけなのか?
そんなのどっちでもいいんだけで、つまり、二人はワンセットとして周りに認識されているんだ。
最近では、市ヶ谷島は、出来のいい友達の後ろをついてまわって、おいしいどこどりしている卑怯者、なんて噂まで立つ始末。
悔しいけれども、日吉は仕事もできるし容姿も悪くない。
そして、島は勉強できるところなんて国語以外見たことないし(しかも漢字が凄く書けるとか、速読できるとか、とにかく恐ろしく地味だ)、容姿は普通すぎるほど普通で、いいところなんてほとんどないのだから、そんなこと言われてもしょうがない。
日吉もあんなお荷物背負っちゃって、面倒だと思ってるはず。
自分の得にならない人間は、邪魔だろうに。


なのに、なんで離れないのさ。


二人が一緒にいると、腹がムカムカしてくる。
島が日吉に笑いかけると、癇癪を起したくなる。
なんだよ。
島、お前僕が好きなんだろ?
だから、我儘でもなんでも聞いてくれるんだろ?
じゃあ、なんで日吉なんかのところにいるんだよ。
僕のご機嫌をとりなよ!

僕がそうやって機嫌を悪くすると、島はすぐに気が付く。
そして、そっと僕の頭を撫でてくれるのだ。
頭をなでられるなんて、はじめての経験だった。
島に頭をなでられると、酷くむずむずした。それが嫌だ。嫌い。
だから、僕は島に頭をなでられるのが好きじゃない。
でも島はしつこく撫でてくる。
僕が嫌だと言ってるのは、知っているくせに。
もう、なにがなんだかわからない。
僕の機嫌の悪さはすぐに察知してくれる癖に、こういうのは気付かないってどういうこと?


ねえ、どこまで許してくれるの?
どこまでわがまま聞いてくれるのさ?
自慢じゃないけど、友達なんて存在作ったことがない。
作れなかった?作らなかった?そんなのどっちでもいい。
だって、友達なんて欲しいと思ったことなかったし、いつだって傅いてくれる人間がいたから必要もなかったし。
どこまでやったら離れていくのかなんて、わからないんだ。
でも、


あれだけわがまま言っても笑って許してくれるんだ。
島が僕から離れるわけなんて、ない。


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