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2-8

いろんな事態を想定して、色々裏工作をしたんだけども、そのほとんどを使うことなく、無事僕らの交渉は成立した。
向こうは、僕が危険な人物ではないかを確認したかっただけらしく、ちょっとした質問をされただけで無罪放免。
僕が質問によどみなくと答えれば、大きくうなずかれた。


アザレを見守りたいんだそうだ。
アザレが笑っているのを見るのが、幸せなんだってさ。


僕は彼らのその謙虚さに、激しく心を打たれてしまった。
うう、ちょっと好戦的な気分で交渉にきていたというのに・・・!
っていうか、幹部の先輩たち、ほんと出来た人たちでさー!
アザレの友達に失礼な態度はとれない、って、おま、どんだけー!
その切ないまでの謙虚さに、僕はいつの間にか偶にでよければアザレの近況報告をしますよ、なんて自ら申し出てしまっていた…。
だって!だって、たまらないだろ・・・!
なんだその、一昔前の武士の恋みたいな見守り方!切ない…!!
アザレ親衛隊への、僕の好感度はうなぎ登り。
そんなこんなで、たまーにこうして、会う時間を設けてるってワケです。


「あと…この間の話にあったんで、苺あげてみたら、喜んでました。顔には出てなかったけど。」
「そうか。」

昼の様子を頭に浮かべて笑い交じりに言えば、リーダーは満足したように大きくうなずいた。

親衛隊と仲良くなった僕は、ちょくちょくアザレの情報をもらうようになった。
苺が好きっていうのもその一つ。
アザレは素直じゃない性格をしているものだから、それをわかってあげるのもなかなか難しいと、リーダーたちは思ったのだろう。
確かにアザレには、友達がほとんどいない。
それはあの性格のせいもあったし、近づきがたい容姿のせいもあったし、ファンクラブの存在の所為でもある。

鷺ノ宮におけるファンクラブの存在は、デカイ。
ファンクラブき目をつけられれば、身体的、精神的な制裁を加えられる。
この人たちみたいに、平和的な組織であることは、ほんと珍しい。
なんといっても、親衛隊だからね。
親衛隊に入らなければ、近づく権利もない、というのが鷺ノ宮の常識なのである。

そんな悪しき習慣もあり、アザレの親衛隊さん達は自分たちのせいで、アザレに友達ができないんではないかと、気にしていたらしい。
な、なんといういい人。
アザレに友達ができない理由の8割は、あの性格だと思いますよー。
そんなこと思ってても言わないけどな。うん。
アザレにばれたら、またあの凶悪なローキックが飛んでくるしね。コワイヨー。

「また頼む」
「いえいえ。」

軽く挨拶をして退室しようとした僕の背に、ある幹部の声がかかった。

「待て市ヶ谷、言うのを忘れてたぞ。アザレは、照れると頬の内側を噛む。」
「・・・リョーカイシマシタ。」

それは知っていても、使いづらい情報です先輩。
頬の内側噛んでるのって、傍から見てわかるか?
っていうか、なんでそんなこと知ってんだファンクラブ。末恐ろしいなほんと


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あきゅろす。
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