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2-6

ざわめく喧噪のなかで、僕はクリームたっぷりのショートケーキを口に運んだ。
目の前には完食済みのパスタ皿が一枚。今日はカルボナーラをいただきました。
ホント、このガッコの学食は何を食べても美味い。マジで美味い。
節約のため、基本的に学食を利用しない僕だったが、利便性と美味さに、たまらず昼だけはどうしてもココを利用してしまう。
まぁ、特待割引があるからそんなに負担じゃないんだけど、ね。

「珍しい、デザートなんて」
「なんかそういう気分だったんだよねー。」
「っていうか、食べるの遅い。バカ島。ノロマ島。」

ノロノロとクリームを口に運んでいると、アザレが最後の一口を口に入れつつ、僕の皿を見た。
ううーん、遅いかな。遅いかもな。

「やっぱこう、いろんな人に感謝しながら食べてるとなぁ・・・」
「嘘つけ。食うよりしゃべる方優先してるからだろ!さっさと食べろ!」

びしり、とアザレが僕の目の前のケーキを指差すと、一実が自分の手首に巻かれている腕時計を見る。

「まだ時間はあるよ。そんな早く食べても仕方ない」
「・・・っ、煩いな!」

ブラックのコーヒーに口をつけながら呟いた一実に、アザレは、眉間にしわを寄せながら顔をそむけた。
と、そこで僕は気が付く。

「アザレ。」
「ん?何、バカし、」

僕の声に顔を向けたアザレの唇に、スッと指を近づける。
驚いたように固まった、アザレの唇の端についた米粒を指先で掬い取り、そのまま僕は自分の口に運んだ。

「ご飯ついてた」
「・・・!・・・っ!」
「・・・お前、ソレ素でやってるの?」

目を見開き真っ赤になったアザレを、呆れたように一実が横目で見ている。
役得ですよ、役得。
まぁこんくらい、普通の友達でもやると思うけどなぁ。
僕なんか、兄ちゃんたちに直接舐められたぜ。
流石にそれはおかしいな、って気付いてるから、やんないけどな!
兄ちゃん達も、僕をからかうことにかけては全力投球だよ、本当。結構、自分へのダメージもでかいと思うぞ、直舐めは。

「なになに一実さんもやっちゃう?おべんとつけちゃう?」
「いや、結構」
「ちょ、バカ島!!僕の許しもなく、何やってんのさ!おま、」
「はいはーい。アザレ、あーん」

真っ赤な顔から一点、怒りに眉を吊り上げて、僕を怒鳴りつけようと大きく開いたアザレの口に、ショートケーキのてっぺんにあった苺を、無遠慮に突っ込んだ。

「んぐ、」
「アザレ、イチゴ好きだったよね」

笑ってそう言えば、文句言いたげではあるが、アザレは無言で口の中のイチゴを咀嚼した。
ちょっと大きめの苺だったせいか、小動物が口いっぱいに食べ物頬張ってるみたいで可愛い。
にこにこしながらそんなアザレを眺めて、まだ半分以上残ってるショートケーキの皿を、一実の前に押し出した。
一実が小さくため息をつく。

「食べれないなら、最初から頼むなって言ってるだろう?」
「しょうがない、食べたかったんですよ。猛烈に。しかしながら、僕は甘いものだめなんだなコレが」
「だめなのに、なんで頼むんだよそもそも・・・」
「少しなら好物なんだよね。でもたくさん食べるのは胸やけがする・・・」

文句を言いながらも、一実はショートケーキを口に運んだ。
ふふふ僕は知ってるぜ。
一実は意外と甘いものが好きなんだよな。
でも隠してるんだよな。甘いもの好きな男は、カッコ悪いって思ってるから。
一実って結構、古風な考えあるよなぁ〜。
絶対結婚したら、亭主関白だな。



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