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4-18

子供か、コイツは。

そう思ってから、ふと思い出す。
そうだ、銀はまだ子供だった。何せまだ中学3年生。
しっかり完成された骨格と、大人っぽく整った容姿についついそのことを忘れがちになってしまうが、まだまだ子供だったよ。そう言えば。


銀の容姿は、無造作に遊ばせた首元までのミディアムカットの透きとおるような銀髪に、雪の様に真っ白な肌。
そのくっきりと大きい灰色の瞳が、実は薄っすら黄みがかって、光にすかすと金色にも見えることを知っている人は少ない。
顔のパーツも位置も整っている銀は、普通にしていれば美男子に属するのだろうとは思う。
思う、と言ってしまうのは、僕があんまりにも銀の情けない姿を見過ぎている所為だ。

正直、美男子が台無しである。

あんな顔ばっかりみてりゃあ、そりゃ顔が綺麗なことだって忘れるさ。
全く持ってもったいない。
せっかくの男前な顔が、だらだらに緩んでいたり、今みたいに涙でっぐしゃぐしゃになっていたり。
それがかっこよくないわけではないんだけれど、も。

「ああ、もう。イイ男が台無しじゃないか、もー」

手を伸ばして、銀の頬を伝う滴をぬぐってやる。
ぐずぐずの顔に、そしてこの態度。
全く持って子供。
なんともまぁ、大人の男とは言えないよなぁ・・・。
なのになんで、モテるんだか。
顔か。所詮男は顔なのか。
中身で好きになってくれる子、募集中です。


銀は涙をぬぐい取ったその僕の手に、おずおずとすり寄って。
そしてそのまま、涙をぬぐうという用が済んでゆっくりと元の位置に戻る僕の手にひっつくようにして、自分の顎を僕の膝の上に載せた。
いつの間にか銀は体ごと僕の方に寄っており、両手も僕の膝の上にちょこんと乗っていて。


その体勢で、こちらを見上げてくるその姿といったら。


(・・・・!・・・っ!!)


僕はひたすら無言で、突然襲ってきた衝動に耐えた。

だ、だめだぞ市ヶ谷島!
コイツ、分かってやってるにちがいねぇ!
許しちゃいけない許しちゃいけない・・・!

今にも「くーん。」という、切ない鳴き声(イヌ)が聞こえてきそうな銀の様子に、抱きしめてしまいたい衝動をひたすら耐える。
と、とりあえず・・・

「じゃあ銀、僕のお願いを一個聞いてくれたら許してあげる」
「・・・っ!」

ぴ、と銀の目の前に人差し指をたてて、その瞳を見つめて言うと、とたんに輝くその美貌。
ま、眩しい・・・。
その表情の変化に、その背に思いっきりぶんぶんと振られる尻尾まで見える気がする。

「キツネ、俺、なにすればいっ?」
「取りあえず、僕をこのコンテナの上から下ろしてくれ」

銀なら僕一人くらい抱えても、余裕で降りれるだろうから。
案の定、銀の顔は「そんなこと?」とでも言うようにキョトンとして(たぶんコイツ、なんで降りれないの?とでも思ってるんだろうな。運動神経いいやつはみんな豆腐の角に頭をぶつけて記憶喪失になればいい)、しかしすぐににっこりと笑って大きくうなずこうとした。
しかし、その瞬間。


「だめだ。」


低く響いた、その声。

僕と銀は同時に、その声が聞こえた方向へコンテナから地上へと顔を覗かせた。

「まだ、仕置き中だ。勝手なことすんじゃねぇよ。」

楽しそうにこちらを見て笑う黒さんのそんな無碍な言葉に、僕はうなだれ。
そしてそんな僕と黒さんを交互に見ては、銀は困ったように眉を八の字にした。


まだそのプレイ続行中なんですか黒さん。
僕もう、らめええって感じです。



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