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4-16

なんだか親戚の子供を見るおじさんの様だ、とそんな自分の心境を笑ってしまう。
すると、倉庫内が次第に騒がしくなってきた。
あの黒いバイクが入ってきたのを皮切りに、何台か同じような雰囲気のバイクが入ってきたようで。
どうやら外にも集まってきているらしく、音が大きく小さく倉庫内に反響する。

おそらく中に入ってこれるのは、幹部近くのものだけなのだろう。
幾ら『黒』が比較的小規模なチームといえども、それはそれ。
それなりに、構成人数はいるのだ。
それこそ、この倉庫には入りきらないくらい、には。

エンジン音が一つ止まり、二つ止まり。
そしてある程度の静かさが戻ったとき、再び声が響いた。

「黒、なんかあった?なんか、機嫌悪いの直った?」

不思議そうな子供のような問いかけを耳にして、僕は首だけコンテナから覗かせた。
ざっと倉庫内を見回して、ふと気づく。
銀髪の乗っていたバイクの運転手が、いつの間にか居なくなっている。
荒い運転をしていたその男は、フルフェイスのメットをしていた所為で顔はまったくわからず。
それが誰だったのか、判別がつかなかったのがなんだかちょっと悔やまれる。
あのドライビングテクはすごかった。
少し顔を見てみたかったのだけれども。


まぁそれはとにもかくにも。
銀髪のあの子が、なんだかそわそわしているのが見える。
・・・なんか面白いもん見れそうだ。
あの子、子供っぽいせいか、たまに面白いことするからなあ!

わくわくと目を瞬かせる僕には相変わらず気づく様子もなく、銀髪の長身はぴょんぴょんとその場に跳びはねつつ首をかしげている。
ちなみにその落着き無いその子の身長は、180センチを超えている。
それで僕より一個下とは、いったいどんな遺伝子情報になってるってんだ。
本人いわく、外国の血が混じってるかもしれないらしいが、それにしたって末恐ろしい。

っていうか、あの図体で伸しかかられると、ほんと重いんだよなぁ。
正直、そろそろ勘弁してほしいところだ。

首をかしげる大きい子供に、黒さんは無言のまま。
そう、無言だった。
無言で、表情も変えず、何も変化はなかった。

それなのに。


銀の体が、一瞬固まった。


そしてさっきまでの跳ねるような動きは鳴りをひそめ、ゆっくりと周囲を見回す。
その視線が、壁際に佇んでいた早苗さんを見つけて、またも一瞬止まる。
そしていつの間にやら静かになった倉庫内に響いたのは、先ほどのような舌足らずな甘い雰囲気がかき消えた、本来の低くはっきり響くあの子の声。

「もしか、して」


ドキ、と。


コンテナの上に伏せながら、その声を聞いて大きく胸が跳ねた。

待て待て待て。
いや、まさか、そんな、うん。
いやいやいや、気づくはずがないって。
いくらなんでもなんのヒントもないのに、僕がここに来ていることに気づくとか、あのほわんほわんしたあの子が。
ナイナイ。

そう心中でつぶやきながらも、冷たいものが背中を流れるのを感じて。
そのうっすらと感じた変な焦りに、ひたすら『僕はコンテナ!今日から、僕は鉄の容器として生きていく!コンテナ王に、僕はなる!』と一心不乱に心で叫びつつ、無心に努めることに専念してみたわけなのだが。

けれどそんな僕の努力をあざ笑うがごとく、ゆっくりと黒さんの腕が上がる。

腕が上がる動きと同じ速度で、銀髪の子の目がその先をたどる。
黒さんの指が、何かを指し示すように指さして。


そして。



「キ、キツネ・・・・・!!!」



バチン!と音でもするんじゃないかというくらい、大きく見開かれた瞳と視線が合ってしまった僕は、その口から発せられた大音響とともに、がっくりとうなだれた。


「あーもー・・・やだぁ〜・・・」


口の中でつぶやかれたその言葉は、誰にも届いていないだろうけど。

これからの展開を容易に予想できて、一気に疲れがのしかかってきたような気がするぜ。ハハハ。



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あきゅろす。
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