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4-4

そしてやってきました、THEビルの屋上。
吹きすさぶビル風が、夏が近づいてきたといえども少し肌寒い。
びゅうびゅうと吹き荒れる風が服をなびかせ、髪をぐっちゃぐちゃにかき荒らしていく。

「お手軽無造作ヘアー・・・」
「いつも無造作じゃないの?」

あっ
それもそうだ。
あまり外見を気にしないから、基本的に僕のスタイルは変に周りで浮かない程度に無造作なのが普通でした。

早苗さんよく見てるぅー。

ニヤニヤ笑って肘で早苗さんのわき腹をつつきつつ、足を踏み出す。
普段が無造作ヘアーでかき乱されても困らない髪形であっても、髪が風にもてあそばれるのは気持ちがいい半分、うざったい半分というところで。
視界を遮る髪をかきあげながら、玲爾さんの待つ屋上の端に寄って行くと、だんだんと喧騒が聞こえてきた。
肩の高さくらいまでしかないフェンスを、早苗さんと二人、並んで覗き込んでみれば。

「うわあ・・・こりゃーまた。」
「派手にやってんねぇ〜」

眼下に広がったのは、路地や空地を使って暴れている黄色と黒。
この闇夜に黄色はきれいに浮いて、反対に黒は溶け込んでしまっているのが印象的だ。
通常チームの構成員は、なんでか自分のチームが冠した色を身につけたがる。
だから目の少し悪い僕だって、このうごめく色を見ればそんなに遠くないここからならばわかる。

「「黄」と「黒」、喧嘩してたのかぁ〜」

知らなかったなぁ、と呟く早苗さんの声は、やっぱり長閑で。
眼下の戦場とミスマッチ過ぎて、違和感がすごい。
顔をしかめて下の様子を見ていた僕の横に、玲爾さんが歩み寄る。

「4月からこっち、「黒」が機嫌悪くてな。そこに「黄」が噛みついた。」
「そりゃあまた、思い切ったことを・・・」

思わず肩をすくめた。
数あるカラーチームの中でも「黄」は一番入りやすく、誰でもオールオッケーな緩いチームである。
そのために個人の戦力はまちまちであるが、なんせ規模がでかい。

「ありんこみたいでも、多いとうざいんだよね〜」

早苗さんが、「黄」とやりあった時のことを思い出したのだろう。
厭そうに舌を出して、顔をしかめてそう言った。

一方黒は、この街の闇も闇。
風俗関係の店にも出入りし、やくざとも付き合いがあるとの噂も絶えない。
何よりも、触れてはいけないとささやかれるチーム。

それが「黒」だ。

一部ではクスリをさばいているだの、売春を斡旋しているだの、非行じゃ収まらないような噂が絶えない。

黒は規模こそ小さいが、そのかわり個人の能力がずば抜けて高い。
いわゆる一騎当千型の戦闘員を多く持つのが黒なのである、が。

「黒さん、黄なんて歯牙にもかけなかったのにねぇ。なんでそんなに苛立ってたんだか。」

首を傾げた僕を、玲爾さんと早苗さんが両隣から胡乱な眼で見てきた。


え、なに。何か。


右、左、右、と交互に見上げるも、二人とも無言で僕を見下ろしてくるばかり。
しまいには、二人同時にため息をつく始末で。

タイミングバッチシで、仲いいじゃねぇかこの野郎。
YOU達付き合っちゃえYO!

「言いたいことがあるなら、口で言ってもらえますかね!」
「・・・ヒントは、四月からってとこかなぁ・・・」
「双子は本当に苦労する・・・」

うざ!この二人、うっざ!!
四月からっていったって、僕ちょうどその頃から鷺ノ宮に通い始めたから、なにがあったなんか知らないに決まってんじゃんね!
居ないのにわかったらすごいって話じゃんね!



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あきゅろす。
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