4-3 「あぁ、そう言えば双子は」 「・・・・・・・・。」 思わず黙ってしまった僕に、玲爾さんが首をかしげ、頭上で早苗さんが忍び笑いを漏らしているのが聞こえる。 言いづらい。 とっても言いづらい、が。 「・・・秘密で、抜け出してきちゃった・・・な、なーんて」 「・・・・・・・お前は、是が非でも、この辺りを荒らしたいんだな?」 迷惑だ。 なんて、めっちゃ怖綺麗な顔でそんなこと言われてもね! 兄ちゃんたちが暴れるのは僕のせいじゃないっていうか。 そこはなんとか玲爾さんたちが頑張るべきっていうか。 それでもなんとなく、日々兄ちゃんズを心配させている自覚はあるので、どこかいたたまれなくて目を宙に泳がした。 玲爾さんの大きなため息を聞いて、ハハハ、と乾いた笑いも僕の口から漏れて。 いつの間にか僕が呆れられているような雰囲気になってしまった。 こりゃいかんと、話題を戻すべく手元のジュースで喉を潤す。 一口飲んだところで、僕より先に玲爾さんが口を開いたので、視線をジュースから玲爾さんに移した。 コップに口をつけたまま、目線を上げてその美貌を見上げて。 「アレを、私に委ねて。それで・・・お前はいいの、か」 絞り出すような声で。 思いつめたような、苦しみに満ちたその表情は、歪んでいるのもかかわらず、それでもやっぱり綺麗で。 「僕?正直僕、あんま関係ないと思うんですけど。友達が逃げたいって言うから、ちょっと逃げ場を確保しに来ただけなんでー」 「・・・私が、あの子に対してどういう気持ちを持ってるかわかっているだろう。」 「モチのロンで。やだなぁ玲爾さんったら!」 まったくもう!と、おばちゃんのように手首のスナップを利かせて手を振る。 と、玲爾さんの眉尻がつりあがった。 ひええ、すみませんすみません。 他人事なもんで、どうも茶化してしまい気味に。 「友の一大事に、よく茶化せるもんだな」 「ぶっちゃけ、僕にはそんな一大事には思えないんですよねぇ。うーん。」 「・・・・・・アイツの元には返せなくなるぞ。いいのか?」 「それを聞くべきは僕じゃない。」 所詮、その人にとって何が一番助けになるのかなんて、他人にはわからない。 求められたことだけやったって、それは本当に必要なことじゃないかもしれない。 でも、求められたこと以上をやったら、余計な事だった、なんてことだってよくある話で。 だったら。 だったら自分のやりたいことやるのが、一番じゃないか。 こんなこと望んでないかもしれないけど、まぁそれは、僕に頼んだ相手が悪いって言う。 まぁ、そういうこと! そう言って笑うと、やっと玲爾さんの顔に笑みが戻った。 「いいだろう。頼まれてやる」 やっとのことでもらえた了承の言葉に、早苗さんといやっほーい!と、両手を合わせて喜んだのもつかの間。 玲爾さんの口から続いた言葉に、しばし固まった。 「その代りお前も頼まれろ。「黒」が暴れてる。止めてこい。」 王子。 僕、魔法使いでも何でもないんですけど。 いっちばんヤバイチームを止めろとか、どんな勇者のミッションですか。 僕、村人ポジションですよ。 ええっと。 今の取引の話、なかったことにしていいですか? [*前へ][次へ#] [戻る] |