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それからというもの、僕はこまめに東山に声をかけるようにしている。
とは言っても、おはよう、とかおやすみ、とか行ってらっしゃい、とかそんな挨拶程度のものだけど。
東山からの返答はない。
まぁこれは、僕の自己満足でしかないから、返答がないことは気にならないんだけどね。
ちょっとだけ、関係をつないでみたくなったから、なんとなくやってるだけのものだし。
これがどう変わっていくのかはわからないけれど、今現在、そんなんで僕の中での東山像はそんなに悪くないのである。
なんかああいうタイプって、キレるポイントもわかりやすいしなー。
そこ避けてけば、まぁ平気でしょ。
そう言えば、一実に憮然とした表情で「意外だ」と一言呟かれた。
まったく失礼しちゃうよね!島ちゃん怒っちゃうぞ!ぷんぷん!
あ、すいません冗談が過ぎましたそれはやめてください一実さm以下略
そんなこんなで今現在、東山との目立った衝突はない。
の、だが。
それ以上にデリケートな話が、今、僕の周りに持ちあがっている。
なんというか・・・
「バカ島!なにぼーっと突っ立ってんのさ!次移動教室なんだから、さっさと僕の荷物持ちなよ!」
「・・・・・・・・。」
「なんだその目は!バカ島の癖に僕に逆らう気!?」
「・・・イエナンデモアリマセンヨー」
自分の席の椅子に座っている僕の、目の前に仁王立ちするのは、クラスメイトの皆本アザレ。
サラッサラの栗色の髪に、こぼれるんじゃないかと不安になる程大きなスカイブルーの瞳。
傷一つない肌は滑らかで、真っ白だ。
ビスクドールのような端正な容姿に浮かぶ、珊瑚の唇からこぼれおちる声もまた鈴のような音色で。
しかし。
まっことに残念なほどに、その音色の多くは、罵声に費やされる。
「鈍い!僕が呼んでるんだから、3秒で来なよ!」
「あーはいはい。教室は逃げないよー」
教科書の準備を整えて、入口にいるアザレの元に向かう。
横に並んでそのまま、なんとなくアザレの髪を触るように頭を軽く撫でれば、アザレの猫のようなつり目がもっと吊り上って、思いきり手を撥ね退けられた。
「ウザい!いいから行くよバカ島!」
「アイアイサー」
毛を逆立てた猫のようなアザレの後ろを、笑みを浮かべながらついて歩く。
僕の横を歩く一実はその笑みを横目で見て、肩を軽くすくめた。
一実、皆まで言うな。
可愛いものは愛でるに限るんだよ、人類として。
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