SS・Serial …etc
言葉は嘘と
*シリアス/暴力的表現有
今日はちょっとしたサプライズをしようと思って奈緒(ナオ)の家に連絡もなしできた。
どこから間違えてた?って聞かれたら僕は間違えなくここだって言うだろう。
最近慣れてきた、奈緒の家の鍵を、僕専用の鍵であけること。
それがなんだかまだこそばゆくて、擽られたみたいに小さく笑ってから奈緒に気付かれないよう静かに中に入る。
舞い上がっていたから、気づけなかった。
いつもと違うことに。
錯覚の中に錯覚が見えて、信じたくなかった。
いつもと違うこと、なんて。
中に入って寝室の前を通っても気付かないところを見ると寝てるのかもしれない。
早速準備に取りかかろう!
って、持ってきたものをテーブルの上に置いていく。
一番大事な、手作りのケーキは冷蔵庫へ。
後はお皿とかを出すだけ、それは奈緒と一緒にやりたくて僕は奈緒がいるだろう寝室へと向かった。
どきどき、わくわく、そう高鳴る胸を押さえて、これから楽しいことが始まるんだって、信じてた。
でも、僕が見た光景は――…
僕はいつもみたいに鍵を使っていつもみたいにご飯の支度をして、いつもみたいに寝室の扉を開けただけ。
唯、いつもと違うのは僕がくることを知らない奈緒と、いつも僕と奈緒と二人で遊んでるベッドの上に僕じゃなく女の人がいる、だけ。キスをしながら。
女の人が微笑んで、奈緒の首には腕が回っていて“本当の恋人同士”ってものをまざまざと見せつけられた気がした。
唇の角度を変えた奈緒の瞳がこっちを見る。
驚いたように目を瞬き、面倒くさいというような表情をしながらゆっくり唇を離す。
そのキスの余韻で濡れた唇が、ゆっくりと僕の名前を作った。
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