「……だーってこいつが甘いのが悪いんだってぇ!
たつたちも舐めてみれば?こいつちょー甘いよー?」
「リンの二の舞になるのはいただけないな」
「同じく」
お兄さんの言葉に心底嫌そうに表情を歪めた鶏頭のお兄さんに続いて、ハゲのお兄さんも項垂れながら挙手をして同意を示す。
それにお兄さんは「えぇ〜」って言いながらもケラケラ笑ってた。
大変そうだなー…。
ボーッと鶏(略)お兄さんをみてると、視線に気付いたのかお兄さんは僕の方を向く。
僕もお兄さんを見てたわけだから、当然視線もぶつかった。
「…お前、名前は」
「…………え、?」
「お前の名前だよ、そんなことも言えねェのか」
「……っ」
合わさった視線はとても強くて不意にかけられた言葉に反応できなかった。
少し間をあけて聞き返すと面倒くさいと言わんばかりの表情をした鶏お兄さんが馬鹿にしたように言ってくる。
それにまた泣きそうになった。
なんだか凄く、蔑んだような、視線。
僕はこの人になにかしたのか、なにか気にくわなかったのか。
どちらかといえば僕が被害者なのに……っ。
「あーたつが泣かせたぁー!!わりぃーんだぁ!
俺にとってはぁ、好都合だけど」
僕の潤んだ瞳にいち早く気づいたのはやっぱりかっこいいお兄さんで、嬉しそうに笑いながら舌を出して、また顔を近づけてくる。
けど、伸びてきた舌は僕に触れる前にかっこいいお兄さんの口に隠れた。
「やめろってんだろうが」
舌を遮ってくれたのはあの鶏お兄さんで、かっこいいお兄さんが後頭部を擦っているところを見るとどうやら殴られたらしい。
なんて、脳は冷静な判断を下してた。
「いってえぇ〜…なぁーにすんだよたつぅ!」
「お前は泣くんじゃねェよ」
痛みに堪えて叫んだかっこいいお兄さんを華麗に無視して、腰を屈めると鶏お兄さんはどこから取り出したのか、僕の顔にハンカチを押し付けた。
そのハンカチで顔を上下に拭かれる。
拭かれてるのは涙なのか顔なのか、わからないほど大雑把だったけど。