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小さなジェラシー(男鹿)

「ベル坊〜」
「アーブー!」
「こんな顔って恐くな〜い?べろべろばー」
「ダー!」
「そっかそっか、じゃあ次は…いひゃいいひゃい」

女にあるまじき変顔(しかもかなり凶悪な)でベル坊をあやすと、(思いっきりつねられたが)期待通りの反応を見せてくれた。
やっぱりベル坊は私の知る限り「変わり者で可愛い赤ちゃん」No.1の座に君臨していらっしゃる。


まあ育てている人が人…じゃないからか。納得。

「男鹿ー、ベル坊に新しい服買ったげなよ」
「ああ?ざけんな。そいつの癇癪のせいで俺の服がねェっつの」
「着せたら絶対可愛いって」
「泣いたらンなこと思う間もなく消滅するぜ。灰すら残らねェな」

やっとPSPの電源を切ったのか、それを机の上にほっぽって男鹿は大きく伸びをした。

「えー、ベビー服売場行こうよ」

ほぼ独り言に近い声で言う。
どうせこいつはこの手の話には反応も興味も示さないし、聞こえたとしても聞こえないフリをして流すに違いない。

伸びをした後、胡坐をかいて此方に向いた男鹿。
私は男鹿のベットにちょこんと座っているベル坊を、床に座ってあやしている。

つんつん

「すごいふにふにしてる」
「アダ」
「ごめん怒らないでよ」

興味本位でベル坊のふにふにの頬っぺたはつついていると、私の人差し指をベル坊が両手で掴んでいた。小さな抵抗に頬を緩ませる。

「男鹿、見て見て可愛い」
「…………」
「男鹿?」
「…………」

返事をしない彼に、向けていた背をくるりと返す。

(…なんだ、こっち向いてるじゃん)

「もしもーし」
「………」
「もしもし男鹿くーん?」
「………」

いつもの無表情で私をじっと見つめる男鹿(いや睨んでいるのだろうか)。手をヒラヒラと振るが一向に反応がない。

いつもと違う様子の彼を不穏に思い、膝をついて男鹿に近づく。
所謂世間一般に「ハイハイ」と呼ばれる格好。現役のベル坊には適わないか、なんて笑ってたら腕をとられバランスを崩す。

「おわっ、急に何?」

倒れこむようにして男鹿に抱き留められる。

突然の行動に眉を潜めて睨みあげる。

(…また前より腕が逞しくなったような…)

腰に回された腕を感じて不謹慎ながらもドキドキしてしまう。
しかも見上げてしまったから至近距離。
何で真剣な眼差しなんだろうか。男鹿のことだから今日の晩ごはんのことでも考えてるのかな。

「あ、えと今日は…」
「…あいつばっか面倒みんな」
「は!?ベル坊の面倒みるのは私の…」

役目、そう言いたかったのに、強く抱きしめられた腕にすべて吸い取られてしまった。

「大きな赤ちゃんですねー」
「…うっせー、ガキ扱いすんな!」
「大好きですよ、心配しなくても」


瞠目した彼は、認めたくないのか赤くなる頬をおさえて頭を掻き毟る。

大きな手のひらに包まれたあと、少し乱暴で優しいキスが落ちてきました。





小さなジェラシー

(そんな彼氏様ですよ)





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