君となら、
「行ってきます」
黒子は自宅を出ると、自分の通う帝光中へと向かう。
今日は朝から雨が降っていて、少し憂鬱だった。
「(…やっぱり、雨は好きじゃない…)」
雨は、自分の存在を消してしまう。
普段は自分で薄めている存在感。
しかし、本当に消えてしまう事は、望んでいない…そして、怖い。
ふぅ、と一つ溜め息を吐いた。
「なーに、溜め息吐いてんスか?」
突然聞こえた声に、振り返る。
すると、バス停に佇む黄瀬君の姿があった。
「…何してるんですか」
…気付かなかった。
通り過ぎる時には、ちょうど俯いて物思いに耽り、気にしてもいなかったから。
「雨宿りッスよ」
「バスを待ってるんですか?でも、バスだと朝練に間に合いませんよ?」
バスが動くまではまだ時間がある。朝練もあるが、動くまで待つのでは、風邪を引きかねない。
「…良かったら、入ります?」
言ってからはっとする。
「いいんスか?!」
黄瀬君は瞬時に目を輝かせ、こちらを見つめている。
ー…まぁ、
「偶には良いですね、こういうのも」
傘の片側に黄瀬君を入れ、再び学校に向かう。
「(そういえば…)」
黒子はふと、不思議に思う。
「よく僕がわかりましたね?」
今もミスディレクションは続けている。勿論さっきだって。
「当然じゃん!黒子っちの事なら何だってわかるッスよ!!」
笑顔でそう言う黄瀬君に思わず顔が赤くなる。
「…何で、そんな恥ずかしい事、平気で言えるんですか」
でも、嬉しかった。
例え消えてしまっても、彼なら必ず見つけてくれる。
何となくだけれど、そう思った。
気付けば家を出た時よりも軽い足取りで、学校までの道程を歩いていた。
君となら、
(どんな事も怖くない)
(ところで黄瀬君、傘はどうしたんですか?)(それは…ヒミツ)(…は?)
→後書き
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