04.緑と暴走戦車
「このグリーンピースとその唐揚げ交換しやへん?」
志乃のそんな一言から始まった、高校二年目初のお昼時。その志乃の交換対象になった千榎ちゃんはちらりと志乃を見たけどまた直ぐ目線を自分のお弁当箱に戻して言った
「無理。」
「今ならなんと特別にタダですよ奥さん!」
「やった…て、こら志乃。好き嫌いは駄目」
「…くそ」
ちなみに食べてる場所は私達のクラスで、千榎ちゃんの席の机に私と志乃は適当に借りた椅子だけ引いて囲うように座ってます
「傍観者きめこんでる沙依ちゃん、志乃にグリーンピース入れられてるよ」
「ばっ、千榎!」
まさに私のお弁当箱に志乃の握るフォークに乗ったグリーンピースが移されようとしている、ていうか既に数粒入ってる。
千榎ちゃんにバラされてしまったという表情をしている志乃と目が合った
「ちょっと」
「お願いします沙依さま!」
「…グリーンピース嫌いなの?」
「生理的に無理やねん」
「あはは、仕方ないなぁ」
「…甘やかしたら調子に乗るよそいつ」
「体験談?」
「……」
この沈黙は肯定の意と取った私は苦笑した。志乃を再び見ると誤魔化すように笑っている
「まぁほら!美容に良さそうやし」
「なら自分が食べれば」
「…それはそれこれはこれ」
「どんなだ。」
「なぁ」
「あ、ユウジ」
「おう。小春どこや」
「小春?」
ほんとだ、いない。
さっきまで山本くんと話してたのに
「小春ちゃんに逃げられとるーだっさー」
「あ?おったんかおまえ。すまんな、気づかんかったわ」
「やんのかこら!」
「先に仕掛けたんそっちやろうがドアホ!」
あああ…また始まった。志乃から突っかかることが殆どだけどユウジもしっかり喧嘩買うからなぁ…またうるさくなるのか、と以前のあのカオス来襲に構えていると千榎ちゃんが呆れた顔をして黙々と動かしていた箸を止めた
「……一氏、金色さんならさっき職員室向かったよ」
「…おー、おおきに水原」
小春の行き先を知るや否や手に持っていたコンビニの袋を小春の席に置くと教室から出ていった。自分を睨む志乃なんてお構いなしに。あれ、ていうか
「…知り合い?」
「去年もこんな感じだった」
「ああ…」
たった一言にかなり納得。部活中もたまに顔を合わせては小さく喧嘩をするほどだしなこの二人
小さくする理由はお互い部長に怒られたくないかららしい。ならしなかったらいいのに、なんて軽い喧嘩が挨拶代わりの二人には要らない言葉だったり
「…沙依ちゃん」
「なに?」
「弁当、グリーンピースだらけになってる」
無言で志乃の頭を叩いた私は間違ってない。
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