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02.カオス空間とアドレス交換





――ゲーム ウォンバイ!

審判のよく通る声が対戦相手校である青学の勝利を告げて私達の中学最後の夏が終わった。試合終了の直後は金ちゃんと越前くんの一球勝負が印象に残ってその場ではなんだか干渉に浸れなかったけど、宿泊先の自分に割り当てられた部屋に戻ると悲しさや悔しさが込み上げてきて私は少し泣いてしまった。
そのことを知っているのは一緒にマネージャーをしていて同室だった志乃と、いま現在進行形で私と一緒に登校している蔵ノ介だ。本人は多分覚えてないと思うけどたまにこうして思い出した時に恥ずかしい気分になる



「へえ、沙依三組やったんや」

「うん。蔵は四組だよね?昨日志乃どうだった?」

「志乃?別に普通やったと思うけど…どうかしたんか?」

「えーと…あはは」



きょとんとした顔で問いかけられて、なんだ普通だったのかと私は曖昧に笑って返した。その私の対応に対して蔵ノ介はなんやねんと穏やかに笑う



「それじゃ、また帰りにな」

「うん!」



あっという間に着いた校舎の中、三組と四組は階が異なるため私達は階段で別れた。一人で蔵ノ介より余分に階段を上りながら私は再び中三の時を思い出していた。 あれから私につられるようにして泣いた志乃は私より先に泣き止むと高校は自分もテニスをやると言い出した。理由は教えてもらえなかったけど志乃はなにかを決意した感じだった。

そして高校生の今、部活の時間になるとフェンスを挟んだ隣のコートで楽しくテニスボールを追い掛ける志乃を見て羨ましく感じる。まるで蔵ノ介達を見てるみたいにその時の志乃はすごくきらきらしてるから、なんて本人には言ってあげないけど。




「…あれ、」

「あ、おはよ沙依ちゃん」

「おはよう沙依ちゃん、今年は教室でもよろしゅうね☆」

「あ、うん、おはよう。こちらこそよろしくね小春」



なんとなく戸惑いながらも教室に入った瞬間挨拶をしてくれた二人に返す。なんで戸惑ったかと言えば単純にこの組み合わせに迎えられたことに驚いたからだ。え、接点あったっけこの二人?と思ったのがモロに顔に出ている私を見て千榎ちゃんが自分の前の席に座る小春を指して表情を変えることなく静かに言った



「音楽聴きながら寝てたらナンパされた」

「えっ」

「あらいややわ!普通に話しかけただけやのにそないに見られてたなんて!」



千榎ちゃんのナンパ発言に何故か恥ずかしそうに自分の顔を両手で隠す小春を見て千榎ちゃんはまるで慣れているかのように気にせず欠伸をしていた



「えーと…二人って仲良かった、け?」

「んーん初対面」

「……」



これはなんて言うか、千榎ちゃんは中々の強者だ。



「おはー!噂の志乃ちゃんが遊びに…あれ?小春ちゃんも三組?」

「ふふ、せやで」

「え、ずる「小春ぅぅ!会いに来たでぇえ!」

「った!ちょっとなにすんねんボケユウジ!」

「おまえが邪魔なんやろうがアホ志乃!」



予鈴が鳴る時間が近づくにつれて段々この教室に生徒が集まってきたのもあるけど、クラスからそれぞれやってきたこの二人のせいでなんだか騒がしくなってきた。小春はあらあら相変わらずやねぇとか言って笑いながら喧嘩する二人を傍観してる
(なんだこのカオス)
私はこの空間から逃れようと未だ肩にかけっぱなしだった鞄を机に置きに行くことにした。すると千榎ちゃんがやってきた



「…ごめん、避難させてもらっていい?」

「あはは、全然いいよ」

「ありがと」



それから担任がやってくるまで少し話して千榎ちゃんとアドレス交換をした。どっちかというとクールな雰囲気を持ってる千榎ちゃんの携帯に可愛らしいキャラ物のストラップが付いているのを見てギャップ萌えというものを感じてしまいました。










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