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仮想プラネタリウム
01.二度目の春






どうもはじめまして綾川志乃です
いま現在ウチは清々しい小春日和の中、全力で走っております。 寝坊したから?ノンノンノン、寧ろ今日は早く目が覚めた方です。正解は――



「千榎おはよー!!」

「ッ、ぐ」



少し先に愛しの千榎を見つけたから!イヤホンを両耳に装着しながらふらふらと歩いていたその背中目がけて文字通りアタックすれば完全に油断していた千榎は小さく言葉を漏らしてよろめいた。ゆっくりとこっちを振り向いた。あ、もしかしなくともご立腹ですか



「………チッ」



(舌 打 ち さ れ た !)
朝に弱い千榎は基本的にこの時間帯はテンションが低いだけなんやけど今日は超絶に機嫌が悪いらしい。でもウチに合わせてさっき一人で歩いてた時より幾分かゆっくりとなったその足取りに嬉しくなってウチは抱きついた「…歩きにくい」拒否は認めません。



で、



「ウチ四組や!」

「やり。あたし三組」

「なんで千榎喜んでねん!しかも沙依もちゃっかり三組やし…なんなんもう、ウチだけ仲間外れやん!」

「どんまい」

「ウチはやり直しを要求する!!」



きたるドキドキ☆わくわくクラス発表なわけですが、はい。会話の通りウチだけ綺麗に仲間外れにされとります
やり直しは千榎に往生際が悪いと叱られたので早々に諦めて、誰かおらんかなーと再び貼りだされているクラス表の四組の下に目をやると白石蔵ノ介、という名前を発見。後はちらほらと去年同じだった子の名前とか見つけて、まぁなんとかやってけるかなと思った時



「あ、噂の沙依ちゃん。」



千榎がこちらへ向かってきている沙依を見つけた。あっちはまだウチらに気付いてないみたい



「沙依ー!」

「へ?……あ!!」



手をぶんぶんと振って名前を呼ぶと反応した沙依は駆け足気味でこちらに向かってきた



「おはよう、早いね」

「そう?」

「うん。二人はもうクラス見た?」

「見たでー。なんと沙依と千榎一緒!」

「ほんと?よろしくね千榎ちゃん」

「よろしくー。今年は志乃と離れられて嬉しいよ」



え、千榎さんそれジョークですよね。
真顔で言うものだからその辺の判断が難しいけどきっと多分千榎なりのボケとウチは受け取った。沙依は笑うだけで助けてはくれないらしい



「…何気にそういう態度が一番メンタルにくるんやんな」

「え、ごめん志乃」

「どんまい」

「千榎もさっきからそればっか!お昼ん時絶対そっちのクラス行ったるからな!むしろ休み時間毎に遊びに行ったるからな!」

「いやクラスに友達作れよ」



辛辣な千榎の意見を聞き流しながらウチらは校舎へ向かう。途中でテニス部の連中を見かけたりしてウチの頭の中には今年からこの学校に入ってくる一人の無愛想な後輩の姿が浮かんで思わず笑ってしまった



「志乃がなんか一人で笑ってる…」

「思い出し笑いする人ってむっつりらしいよ」

「そうなの?」

「え、ちゃうちゃうちゃう!そこで勝手に志乃むっつり説立てやんといて!」




季節は春。これから何が起きるかはまだまだ未知数です。







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