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Strawberry Pie
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『っ、あン…、す、杉谷ぁ…!』

 両親が知ったら即倒するだろう、卑猥な声。画面に映し出される、濡れ場の生々しいアニメーション。そして隣には、憧れて止まない今村がいる。

『陸、幸稀って呼んで……お願い』

 役に成り切っている今村から息遣いまで聞こえてくるようだ。現場の空気により、真緒の緊張は最高潮に達しようとしていた。
 ―――もう、限界……

「はいっ!お疲れ、今日はここまでね!明日も頼むよ〜」

 ――た、助かった!!
 音声監督の絶妙なタイミングでの終了サインは、真緒にとって最高の救いとなった。
 がやがやと皆が解散していくのを横目で見ながら、真緒は放心状態でその場に立っていた。

「お疲れ真緒君。よく頑張ったわね」

 ぽんと肩を叩き、美和子が労いの言葉をかけた。

「ひ、樋野さぁ〜ん!」

 突然ぐずりだす真緒。

「こら、こんな所で泣くんじゃないぞ!折角上手くいったんだから」

 徹夜して読み込んだだけあって、真緒のアフレコは成功した。緊張した声もラブシーンの雰囲気に合っていて、新人にしては演技力があると関係者が評価していたのを真緒は知らない。

「ほ、ホントですか〜!?俺緊張しっぱなしで、何言ってんのかさっぱり覚えてないんですよ。変だったんじゃ……?」

 夢中になって『陸』になろうとした。そうしたら、いつの間にか恋をしていた。もどかしいくらいに焦れったい片思い。陸と幸稀は結ばれたというのに。

「変な所なんかなかったわ。でも、直す点はたくさんあるわよ?」
「……はいっ!ご指導お願いします!」

 素直で頑張り屋の真緒を、美和子は弟のように可愛がり、そしてマネージャーとして厳しく接していた。始めは、少しの甘えも許さなかったのに。しかし、真緒の仕事に対する志を本物だと認めたのだ。それを感じ取っている真緒も美和子を信頼しきっている。

「おー、楠木君。なかなかよかったよ。流石、我が事務所期待の新人だ」

 真緒たちに向かってくる男性いた。

「社長!いらっしゃってたんですか!?」

 社長と呼ばれた人物は、室内だというのにサングラスをかけ、部屋着のようなラフなTシャツとジーンズを着ていた。見た目だけでは20代にも見えなくはない。

「新人の初仕事には必ずいらして下さるのよ」

 美和子が、社長の代わりに説明した。


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あきゅろす。
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