気まぐれだよ《Alvaro》
「手、握って…?」
不安で不安で仕方なかった。
本当のことなんてなんにもないんだ、ってわからされて。
でも、いま隣にいるのはあなた。
抜き身の鋭い諸刃のあなただけ――
「………」
それでもいい。
あなたになら、いい。
あなた1人くらいどうにでもしてみせるから。
予想通り、彼にとって私なんて存在しないらしい。
言葉どころか微動だにしなかった。
勇気を出して言ったに、恥ずかしい。
気まずくてうつむいたその時だった。
私の手が冷たいものに包まれた。
はっとしてあなたを見上げると、笑っていた。
弱気な私を嘲笑うのではなく、なかなか親離れしない子供を対して向けるような、困ったような優しい笑顔。
「…気まぐれだよ」
それだけ言うとまたすぐに、私を視界から外した。
大きくて、骨ばったあなたの手。
この手だけを頼りに進んでいこう。
この手を守るために進んでいこう。
ぎゅっと握りしめた手には、不可視の可能性が宿っているから。
It's only opening...
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