彼と仲良くなる方法(黒猫)

あいつは一体なんなんだ。

人殺しの俺なんかにしつこく付きまとって、俺が黙っているにも関わらず楽しそうに今日は何があっただの、あの店が美味しいなど一人で話し続けるあいつが俺は苦手だ。今日なんて、今度一緒に出かけようとか言いやがった。バカじゃねェの?

「ランチは猫くんの好きそうなお店にするね。」

お前俺の好きなもん知らねェだろ。大体俺の名前は猫じゃねェ。

「じゃあ土曜の10時に待ち合わせね!遅刻したら猫くんの奢りだから!10時だからね。忘れないでよ!」

と言い残して今日は帰っていった。行くだなんて一言も言ってないのに何なんだよ。知らねェよ。意味わかんね。俺、行かねェから。暇じゃねェし。


















そして土曜日、なぜか俺は非番だった。ほんと、久しぶりの休日。休みの日にしたいことなんて特にないし、何をしようかと思っていると、あいつとの約束を思い出した。ったく、何で俺覚えてんだよ…。と溜め息をつく。時計を見ると12時ちょい前。まさか、流石のあいつだって相手の了承を得ていないのに、このクソ寒い中待ってるわけないだろ。クロノスにいる奴だ。そこまで馬鹿なわけない。ってか、まず行かないだろ。…って何で俺、あいつのこと考えてんだよ。やめやめ。寒いからなんか温かいもんでも食って…


「なんも…ねェ…。」


冷蔵庫の中はものの見事に空だった。














「あー、さみィ…。」

もう少し厚着してくるんだったと後悔しながら買い出しの為に足を進める。さっさと済まして帰ろう、そう思って顔を上げたのが間違いだった。


「、猫くん!」

「……(、げ!)」

何でいんだよ…!俺の苦手なあいつがこっちに向かって嬉しそうに手を振っているではないか。まさかまさか。後ろを振り向くと誰もいなかった。マジかよ。俺?いやいやいや。
すると名前は白く息を吐きながら「猫くん!」ともう一度言い、俺に近づいてきた。何で待ち合わせ場所ここなんだよ。俺、知ってたらここ、来なかったからな!


「よかった〜。何かあったのかと思って心配してたんだよ。……猫くん寒そうな格好してるね。」

「……。」

「あ、マフラー貸してあげる!」

また一人で勝手にしゃべり出したこいつは俺が断るよりも早く、白いマフラーを外そうとしたので急いでその手を掴んで止める。こいつの手は死ぬほど冷たかった。


「……お前、いつから待ってた?」

「え?待ち合わせ時間からだよ?」


当たり前でしょ。と言うように答えるこいつ。現在午後1時前。ってことは約3時間…!?嘘だろ!こいつ、馬鹿なのかよ!?


「ここのね先にあるレストランのランチが………あーもうランチは終わっちゃったかな?」

しかも俺を責めない。
いや、俺は約束してないんだけどさ。でも普通の奴なら、勝手に約束したつもりになって勝手に腹立って勝手に遅れた相手のこと責めるだろ。帰るだろ。なんで、何も言わない。寒い。とか遅いとか。一言も。


「………なんで、待ってた?」

「え…?」

「俺、お前の話聞いてたかわかんねェのに。それに何で俺なんだよ。人殺しの……ブラックキャットになんか構うんだよ。」

構うなら普通の、もっと愛想いい奴に構え。俺なんかじゃなくて。
そう言うとこいつは嬉しそうに言ったのだ。

「猫くんは最後まで私のお話聞いてくれるでしょう?」

みんなはね、私がおしゃべり過ぎるから呆れて聞いてくれないの。でも猫くんは、相槌打ってくれないけど最後まで付き合ってくれるじゃない。だから優しい猫くんなら来てくれるかなって。

そう言って鼻を赤くした名前は笑った。


「待ってる間もね、猫くんのこと考えてたから全然長く感じなかったよ。少し寒かったけど、ほら。カイロ持ってるし。」

ポケットからカイロを取り出して照れたように笑う。
嘘だ。鼻真っ赤のくせに。寒かったくせに。


「………昼飯。」

「?」

「俺が奢る。」

「え…?」

「遅刻したら奢りっつったのお前だろ。」

照れ臭いので背中を向けて言う。うん!と元気よく返事をする名前の顔は見なくても浮かんだ。俺、もしかしたらこいつとなら仲良くなれそうな気がする。




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20100301


話ぐだぐだ。
しかも女の子がお馬鹿さん。

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