リキュールに溺れる(リオン)
深夜に彼女に呼び出されて、こうやって部屋に上がるのはもう何度目か。完全に男として見られていないことがよく分かる。
「お〜リオン。相変わらずキューティーだねェ。」
「なまえサン、俺帰っていい?」
そんな冷たいこと言うなよ〜と言いながらまた新しい缶を開ける彼女。いい年した大人が深夜に「リオン!つまみがない!」と電話をして、未成年につまみを買って来させるのはいかがなものか。呆れて物も言えない。でも、そんな彼女に頭が上がらない自分も相当だと思う。
「何でこうも毎回毎回飲むわけ?」
「大人にはね、色々あるのよ。」
隣に座りながら聞くと、嘆くふりをしながら俺の胸に泣きついて来たなまえサン。毎度のことなので頭を軽く叩いてあやすふりをする。酒が入ったなまえサンはスキンシップが激しくなるので、正直なところ俺もこれが目当てで来ていたりする。それに酔ったなまえサンって、少し赤い顔で甘えて来てくれるし。これがなきゃ、いくら好きな人が相手だからって、わざわざ深夜に出て来ないし。俺だって男だ。仕方ない。
「それにしてもリオンはいい子だね。」
俺の胸から離れて何を言い出すかと思えばこれか。
「いい加減その年下扱いやめてくれる?」
「だって実際年下じゃん。」
「精神的にはなまえサンのが年下っぽいけどね。」
「えへへ〜。じゃあ今日はその大人びた精神の弟くんに甘えちゃおっかな〜。」
「ちょ、ちょっと!」
キスしそうな勢いで抱きつかれて思わず後ろに手を着く。全体重かけてきやがって…この酔っぱらい!
「ってか酒くさい!」
こんな近くになまえサンの顔があるのに酒臭いとか、ムードもへったくれもない。ちくしょ、こんなところでファーストキスなんて絶対に嫌だ。
「リオンってば真っ赤〜。かーわいい。」
しかも、からかわれてるし。こんなん男として最悪だろ。
「リオンも飲むかい?あ、未成年だったかごめんごめ――」
あまりにも腹が立ったもんだからなまえサンから缶を引ったくって一気に飲み干した。唖然とするなまえサン。あー喉が熱い。
「えっ、ちょ、リオン?大丈夫?」
おろおろと心配し出すなまえサンに、形勢逆転だと言わんばかりにその腕を掴んで逆に押し倒してやった。
「……。」
「……。」
何か喋れし。
勢いだけで行動したから、この後どうしたらいいものか。
俺の下に敷かれてるなまえサンを見るとうっすら赤い顔で瞳は潤んでいた。半開きの唇は何か言おうとしたのか、ゆっくりと閉じてまた元のように開いた。あ、バカっぽい。でも可愛い……かも。
「なまえサン、俺、酔ったかも。」
「……えと、」
「未成年に飲ませたんだから責任とってよね。」
「え、あの…責任…て…?」
あ、やべ。気持ちわり。目の前ぐらぐらしてきた。一気飲みなんてするもんじゃないな。
みるみるうちにアルコールのせいなんかではなく、なまえサンの顔が真っ赤になっていく。わ、やべ。可愛い。止めらんないかも。
「それくらいわかるでしょ。」
そう言ってなまえサンの唇にそろりそろりと近づいていく。拒否されたらどうしようだとか、このままキスしたらなまえサンは二度と俺と会ってくれないんじゃないかとか、頭の中でぐるぐる回って。ぐるぐる、回っ、て……。
目を覚ますと朝だった。カーテンから漏れる朝日に目を細めて寝返りを打つ。あ、枕からなまえサンの匂いする。
…は!?
慌てて起き上がると見慣れた彼女の部屋。キッチンからはコーヒーの香りがして、なまえサンが「起きた?」なんて声をかけてきた。え!俺まさか…!
慌てて下を見ると服は着ていた。え、セーフ?セーフ?
「昨日びっくりしたよ。リオンってば急に意識失うんだもん。」
からからと笑ってなまえサンはことのいきさつを話してくれた。
どうやら理性に負けてキスしようとした俺は、急に意識を失って倒れたらしい。なまえサンの額に頭突きをかまして。どうやらセーフらしい。良かった。本当に良かった。記憶のない内に色々と成長してなくて。本当に。
「キスされるかと思ってたのにまさか頭突きとはね。リオンもやるじゃん。」
そう言って笑ったなまえサン。少しくらいは俺の気持ちを察してくれ。
「…キス、されたかった?」
「そりゃあね。奥手な彼が迫ってきてくれたら誰だって嬉しいでしょ。」
好きでもない男を部屋に呼ぶ程軽い女じゃないし。
思わず頭を抱えてしまった。心臓が持たない。嬉しすぎて泣きそうだなんて言ったら笑われるだろうか。
「げ、リオン大丈夫!?二日酔い!?」
「…るさい。」
リキュールに溺れる
20110829
50000hitお礼夢第一段。
リオンが20歳手前、主人公が25歳手前ぐらいだといいなぁ。
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