小説という名の日記C(栞機能無し)
1
晶は毎日メールを送る。
恋人へのメール。
晶の恋人、英。
送信完了を確かめて、宛先エラーで戻って来ないことを確かめる。
ただそれだけで安心する。
だから返信がなくても気にならない。
今日も英にメールを送ることが出来た。
ただそれだけで晶は幸せだと思う。
図書室での読書が晶の日課。
何時もの指定席。
他に幾つも席は空いているけれど、晶は何時も其処に座る。
誰かが傍に来たから顔を上げれば、その知らない誰かが晶に向かって微笑んだ。
隣に座っていい?
返事も待たずに腰掛けたその人は、司と名乗った。
よろしくと言われて、よろしく?と疑問形で返す。
何をよろしくなのかが正直分からない。
だけど司は疑問形に気づかなかったようで、それからも晶に話し掛けてきた。
家に帰ってから英にメールを送る。
内容は今日知り合った司のこと。
司は何で話し掛けてきたんだろうね?
送信して。
送信完了の文字を確かめて。
次にエラーメールが来ないか十分待って。
何時も十分待ってから、何も受信しなかった携帯を机の上に置く。
そして今日も何も受信しなかった。
携帯を机の上に置いて、晶はほっと安堵の息を漏らした。
何時もこの十分が緊張する。
緊張が解けると、何時も晶はベッドに寝転がる。
今日もそうしようとして。
携帯が受信を告げた。
誰だろう。
友達の少ない晶の携帯は、滅多にランプが光らない。
だからメールの受信を告げる青い色を訝しげに眺める。
恐る恐る携帯を手にとって画面を眺めれば。
宛先エラーでなかったことに、先ず安堵して。
次に送信者の欄を見て。
晶の瞳が大きく揺れた。
其処にあったのは英の名前。
晶の恋人。
まさか。まさか本当に英?
何度名前を確認しても、英からのメールに間違いなくて。
返信が来た嬉しさと戸惑いに、携帯を触る手が震えた。
毎日メールのやり取りをしていたのは何年前になるだろう。
ある日突然返事をくれなくなった英。
それでも晶は毎日メールを送った。
例え返信がなくても、英と繋がっていられるのが幸せだった。
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