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小説という名の日記C(栞機能無し)
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総隊長が隊長に事情を問う。
第二部隊が到着するまでの間に何があったのか。
何故戦闘停止を叫んでいたのか。
花を避けろとはどういう事なのか。

問われた隊長は説明した。
王子の心を。王子の思いを。
場所を変えて戦おうと提案した時に悲劇が起こったことを。

総隊長をはじめ、第二部隊の兵達が、隊長の話に耳を傾けている。
血気盛んな兵達の肩が、次第に下がっていく。
王子を失った兵も、第一部隊の兵も皆、肩を落としていた。



もう少し兵の到着が遅ければ、場所を変えていた筈だった。
総隊長がもう少し早く現れて戦闘停止を叫んでいれば、花は踏みにじられずに済んでいた筈だった。

まだ咲いている花もある。
けれども踏みにじられ散っていった花も多く。
頂上の景色が悲しい色に染まっている。

兵達は誰もが意気消沈していた。
言葉は全て後悔へと繋がった。



そんな中、総隊長の声が響き渡った。
皆で手分けして、せめて無事そうな花だけでも元通りにしないか。

異を唱える者は誰も居なかった。
王子を失った兵達も、第一部隊の兵達も、第二部隊の兵達も。
全員が無言で作業に取り掛かった。

無事だった花の茎の部分を地面に埋めてみる。
踏まれて黒ずんだ葉を茎に立てかけてみる。
果たしてそれで育つのかは誰も分からない。
だが皆、少しでも元の景色を取り戻そうとしていた。



作業が終わった。
皆で頂上の景色を眺める。

元には戻らなかった景色。
それでも出来るだけ元に戻そうとした景色。

不意に総隊長が口を開いた。
セリルの花には花言葉がある。
誰か知る者はいるか?

誰も花言葉を知らなかった。
隣国の兵達も知らなかった。

総隊長が再び口を開いた。
セリルの花の花言葉は。

あなたの幸せを願っています。



















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