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小説という名の日記C(栞機能無し)
11

王子の真意を知っている者達が、この状況をはらはらと見つめている。
戦闘を停止しろ。
花を踏むな。
飛び交う声は敵も味方も関係なく。
踏みにじられていく花に心を痛めていた。

事情を知らない第二部隊の兵達が、飛び交う声を敵の声と見做し、防戦一方の王子に襲いかかる。
後退していく王子の足下の直ぐ傍にはセリルの花。
目に付いたその花を避けようと、思わず王子が足を止めた時。

敵兵の振りかざした剣が王子の身体を貫いた。
隣国の総隊長が現れ、戦闘停止を叫ぶのと同時だった。



先に戦っている筈の第一部隊。
到着してみれば、戦っているのは第二部隊の兵ばかり。
第一部隊の兵は、兵だけでなく隊長までもが戦闘停止を叫んでいる。
花を避けろと戦闘の場にそぐわないことも叫んでいる。
様子がおかしいと直ぐ様放った戦闘停止の声は、一歩遅かった。

敵国の王子の身体が崩れ落ちていく。
ゆっくりと地面に頽れようとする。
地面に倒れ伏す間際にその身体を抱き留めたのは、王子の敵である筈の隊長だった。



必死になって王子の身体を抱き留めた隣国の隊長が、そっと地面へとその身体を横たえる。
其処は何もない剥き出しの地面。
セリルの花のない場所。

静まり返った山の頂上。
手柄を立てた筈の第二部隊の兵達に、隊長が低く重みのある声で告げる。
花の上から退いてくれ。



総隊長の次に権威のある隊長の命令。
第二部隊の兵達が顔を見合わせながら、花の上から退いていく。
澄み切っている筈の空気が重苦しい。

沈痛な面持ち。悲しみ憂える兵。
王子を失った兵だけでなく、第一部隊の兵までもが、悲しみにくれていた。



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