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小説という名の日記C(栞機能無し)
8

決定した侵攻。
それが覆らないと言うのならせめて。
王子は自ら指揮を買って出た。
父上は一国の主です。
主はどっしりと構えて朗報を待つべきです。

珍しく意欲のある息子。
息子の言葉は確かに一理ある。
隣国にこれ以上侮られない為にも、息子に指揮を任せた方がよかろう。
こうして指揮権は王子へと渡った。



王子が兵を引き連れて隣国に攻め入る。
敵国の急襲。その情報を掴んだ隣国の王も、慌てて兵を出発させた。
だが情報が急だった為、先に手持ちの兵を、追って次の兵をと、二つの隊に分けて向かわせることにした。

確実に侵攻していく隣国の領土。
険しい山道に差し掛かる。
隣国の民は通常、山を迂回して進む。
だが山を迂回すれば、途方もない遠回りとなる。



城のある都へ攻め込むには、この山を越えた方が遥かに近道なのは確かなこと。
この山を越えた向こうに隣国の都がある。

いざ進め。
王子の号令と共に険しい山道を登っていく。

道は傾斜もきつく誰も通らない。
隣国の民も避けるだけあって、剥き出しの岩肌があちこちに見えている。
もう少しだ。頑張れ。
兵を叱咤激励し頂上を目指す。
国王自慢の屈強な兵達は、気勢をあげ頂上へと突き進んだ。



頂上はもう直ぐだった。
あと一息だ。
兵の先頭に立ち、王子は自ら頂上に足を踏み入れた。

途端に開けた景色。
辺り一面に淡く咲き誇る花。
見たこともない色とりどりの淡い花が、頂上一帯を覆っている。
その美しさに、頂上に辿り着いた誰もが言葉を失った。

これがセリルか。
隣国の或る地域にしか咲かないという花。
この花を見た者は幸せになれるとまで噂される稀少な花。

誰もがこの光景に見惚れていた。
険しい山道を登った疲れも忘れ、魅入っていた。



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