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小説という名の日記C(栞機能無し)
7

従者の命はひと月も保たなかった。
王子の腕の中で息を引き取った。
温もりを失った身体を、王子は一晩中抱き締めていた。

従者の為に墓を建ててくれた民や配下。
王子が慇懃に礼を述べる。
王子に愛された従者はきっと、幸せなまま旅立ったことでしょう。
礼を述べた王子に、皆がそっと口にした。

王子が配下を連れ城へと戻る。
従者の墓は私達が見守ります。
その時も村の民が総出で見送った。



城に戻ってからの王子の生活は相変わらずだった。
喪失感を抱えたまま毎日公務を熟す。
縁談にも首を縦に降らず、淡々と日々の生活を繰り返す。
そんな暮らしの中で、ただ一つだけ、王子が懸命になることがあった。

それは隣国を攻めたいとする国王の説得。
隣国の王との諍いで腹を立てた国王が、隣国を自国の領土にするという。

王子は従者の夢を思い出す。
隣国に咲くセリル。
隣国にしか咲いてない花。
隣国の民も滅多に訪れぬ場所に、その花は咲いているらしい。
それを思い出し、王子は国王を説得した。



隣国の王との関係はなかなか元に戻らず、国王の侵攻の思いが日々強くなっていく。
奴が謝って来ぬのは自分を馬鹿にしているからだ。
自分を軽んじているからだ。
国王の心が憤怒に覆われていく。

王子が幾ら説得しても耳を貸さない。
互いに話し合うべきだ。
そう訴えても、何故自分から奴のところに出向かねばならぬ、と全く歩み寄ろうとしない。

そしてとうとう国王の怒りは頂点を超えた。



隣国侵攻の決定と命令。
最早引き止められる状態ではなかった。
国王自ら赴いて指揮をとるという。

このままではあの花が踏みにじられる。
従者が見てみたいと言った稀少な花が無惨な姿となる。
隣国の何処に咲いているのかも分からないが、その可能性は否定出来ない。



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