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小説という名の日記C(栞機能無し)
5

けれども王子に女性を紹介される度に苦しくなる。
愛する人が自分を結婚させようと、次から次へ女性を紹介してくる。
それが従者には辛かった。
本当は止めてくれと言いたかった。
まだあなたを愛している。
それなのにあなたは他の女性と結婚しろと言うのか。

言いたくても言えない言葉。
従者の心を知らずに、次々に女性を紹介してくる王子。

従者は限界を迎えた。
もう傍に居ることも出来ないと思った。
だから王子に知られないように、国王に辞職を願い出た。
そして国王は従者の願いを快諾した。



従者が居なくなってからも、王子は従者が忘れられなかった。
国王の持ってくる他国の王女との縁談も断ってばかり。
心に大きな穴が空いているような喪失感。
淡々と日々を過ごしていた。

従者の行方が分からない。
もう一度従者に会えたなら傍から離れないのに。
同性同士の恋愛禁止は現行犯。
ならば国王に見つからない場所で従者と過ごしていくのに。

淡々と公務を熟す毎日。
常に脳裏に浮かぶのは、今も尚愛してやまぬ従者の姿だった。



度々行われる国内視察。
今度の視察地域は、城のある街からだいぶ離れた村だった。
農作物を育てる民への声掛け。
田舎に住む民の暮らしぶり。
諸々を王子の目で観察しなければならない。

何事もなければ早く終わる。
場合によっては納得いくまでその地に留まる。
城へと戻り視察した地域の報告と対策。
その一連の判断は王子に任されていた。

初めて訪れた村の雰囲気はよかった。
皆、労働に精を出し、毎日を一生懸命に生きている。
王子への精一杯の持て成しも、心からのものだと感じられた。
だから本当なら直ぐに城へと戻れる筈だった。



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