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小説という名の日記C(栞機能無し)
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竜樹をこの手で殺して、漸く僕はその違和感が何だったのか分かり始めている。
僕にだけ優しかった竜樹。
冷酷な部分を見せられる度に、竜樹が遠ざかっていく気がしていた。
愛理は僕の幼馴染みで、それだけ愛理を虐げている竜樹を目にする機会が多かった。
その度に竜樹が遠ざかっていくようで、僕の知っている竜樹ではないようで、竜樹を失うことに恐怖した。
どんどん知らない竜樹になっていくのが嫌だった。

愛理以外の誰かに向けられる冷たさは、一時的なものとして目を背ければいい。
だけど愛理の場合は近い存在だからこそそういう訳にはいかず、殊更知らない竜樹を見せつけられているようだった。



そうだ、今ならはっきりと分かる。
僕は僕の知る竜樹でいて欲しかった。
僕の理想、自慢の親友の儘でいて欲しかった。
親友でなくともいい、自慢出来る一番近い存在でいて欲しかった。

それは完全な僕の理想の押し付け。
理想通りでない竜樹を目にするのが我慢ならなかった。
竜樹という存在は優しい儘でなければならない。
その優しさを僕だけに向けていても構わない。
ただ僕を幻滅させないでほしかった。
僕の大好きな竜樹の儘でいてほしかった。

僕のこの行動は愛理の為なんかではない、完全に僕自身の為だった。



行動を起こす前の予感。
あの時僕は後悔するかもしれないと感じていた。
そして今、竜樹を失って、確かに僕は後悔している。

僕の理想の押し付け。
たったそれだけの為に、僕は殺人者となってしまった。
自分自身のエゴに吐き気がする。

自覚した途端に押し寄せてくる喪失感。
大切な存在を失ってしまった。
竜樹の傍は居心地が良かったのに、何よりも大切な存在だったのに、僕はそれを気付けなかった。
今この腕に抱き締めているのは竜樹の亡骸で、少しの温もりも感じない。
失ってから気付いても、もう遅い。

優しかった竜樹はもう何処にも居ない。



















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