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小説という名の日記C(栞機能無し)
3

誰にも知られることなく舞台が整った。
僕は散々竜樹に言ってきた。
愛理にも口酸っぱく言って聞かせた。
別れた方がいいと今まで何度も言ってきた。

けれどもその度に竜樹はそうだなと頷くだけで、愛理に至っては別れたくないと頑として頷かない。
だからこれは仕方のない選択。

変わっていく竜樹を、僕は見ていたくない。
だからこれは終末の舞台。
たぶん僕は後悔するだろう。
そんな予感がするのに、何故だろう、頑なに決意を実行しようとしている。
愛理の為だと自分自身に言い聞かせて、大義名分を作っている。

僕には僕の感情が分からない。
だったらこの行動の結果、待っているのが破滅だとしても、それでもいいかと思う。
愛理の為だけでないというのなら、何をどうしたいのか。
胸に蟠る違和感。
この感情の意味を知る為に、僕は銃を手にした。



真摯な彼が僕の前を歩いて行く。
僕に危険が及ばぬようにしているんだろう。
何故こんなにも優しいのに、僕以外には残酷なのか。
愛理にだけではない、僕以外の全ての人に竜樹は冷たい。
愛理と付き合っているから愛理に対して暴君に見えるけれど、今こうして振り返ってみれば、竜樹は僕以外の人には優しさを見せなかった。

薄暗い森の奥深くに進んでいく。
僕を守るように突き進む竜樹の背中。
僕は何をしようとしているんだろう。
どうして竜樹に銃を向けているんだろう。
僕の銃がその背中に狙いを定めている。
引き金を引く指に力を込めれば、鬱蒼とした山奥に物騒な音が鳴り響いた。



崩れ落ちていく目の前の体。
僕を振り返る余裕もなく、不意の衝撃に竜樹が地に横たわる。
ゆっくりと、だけど確実に彼に近づき、僕は見開いた目を静かに見つめる。
彼の目に束の間浮かんだ感情。
だが直ぐにそれは消えて、竜樹の瞼は永遠に閉じられた。

これで僕は遂に殺人者になった。
この胸の痛みは罪を犯した痛みだろうか。
愛理の為ならそれでもいいと思っていた。
妹のような彼女の為に何を捨ててもいいと思っていた。
彼女の本当の幸福の為ならと、そう思っていたのに。
ホントに彼女の為だった?
はっきりと感じる違和感。



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あきゅろす。
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