小説という名の日記C(栞機能無し)
2
愛理は家族同然で、抱き締める腕に性的意味合いは一欠片もない。
僕には兄弟妹がいない。
所謂、一人っ子だ。
だから尚更、愛理が妹のように思えるのだろう。
愛理が悲しむのを見たくない。
愛理には笑顔が似合う。
だから幸せになってほしいと願っている。
友よ、これ以上傷付けるなら、大切な彼女を僕に下さい。
竜樹が彼女を幸せに出来ないのなら、僕が彼女を幸せにしてみせる。
そうして密やかに僕の決意が固まっていった。
声に出しては言えないけれど、我慢の限界が近付いてきていた。
愛理を大切に出来ないなら何故付き合った?
何故僕の目の前で愛理の告白を受け入れた?
あの時に感じた複雑な気持ちは、今もまだ心の中にある。
竜樹の口から今まで一度も聞いたことがない。
だからあの時も、竜樹が愛理の告白を受け入れたことに驚いた。
だけど僕は祝福した。
愛理は妹同然だから。
竜樹は大切な親友だから。
だからきっと二人は幸せになるだろうと思っていた。
僕の複雑な感情は僕自身でも分からない。
暴君と化す竜樹を見るのが、ただただ哀しい。
竜樹が遠くに居るような気がする。
だけどこれは竜樹が愛理に冷たく当たる所為。
妹同然の愛理を竜樹が虐げているから。
だから僕の決意は固まったんだろう。
冷たい竜樹を見ていたくない。
竜樹が悪い方へと変わっていくのであれば、僕は・・・。
山へ行こうと竜樹を誘った。
最近山からイタチが降りてきて困ってるんだ。
だから二人で退治しに行こう。
イタチの被害にあうのはうんざりだ。
困っていると訴える僕に、やっぱり竜樹は頷く。
頑張って退治しようと笑顔を向ける竜樹は、本当に僕には優しい。
その優しさに決心が鈍りそうになるけど、竜樹の存在は愛理を苦しめる。
愛理の前で傍若無人に振る舞う竜樹を見る僕の心をも苦しめる。
竜樹が変わっていくようで、もうこれ以上この二人を一緒にさせておきたくない。
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