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小説という名の日記C(栞機能無し)
4

父親が全ての元凶。
父親の所為で貴宏は笑顔を失った。
母親のように貴宏も父親の暴力に堪えられなくなったら。
何時か貴宏自身も失うかもしれない。

だけど父親と別れてくれとも言えない。
父親と別れたら貴宏がこの家に居る理由がなくなる。
紘弥を捨てた母親のように、貴宏もこの家を出て行ってしまう。

けれども傷つく貴宏は見たくない。
貴宏が哀しそうに笑うたびに胸が締め付けられる。
暴力の痕を見るたびに胸が痛くなる。

相反する感情。
ぐちゃぐちゃに絡まった感情が、何時か自分の中で爆発しそうな予感があった。
そしてきっとそれはその時だった。



午前中で終わった授業。
普段より早く帰り着いた家。
ただいまと玄関を開ければ、貴宏の靴がある。
そう言えば今日は仕事が休みだと言ってたな、とリビングに寄ってみた。

瞬間、目に飛び込んできたのは床に倒れている貴宏。
身動ぎも起き上がろうともしない。
思わず息を呑み、紘弥は貴宏へと駆け寄った。

正常な脈。熱もない。
呼吸も異常はない。
だけど意識を失っていて。
身体のあちこちに殴られた痕がある。
さっき殴られたんだと分かる新しい痕。
父親に殴られ意識を失ったんだと、瞬時に状況を把握した。



何時からか紘弥の前では父親への愛を口にしなくなった貴宏。
無理に父親を庇っているように思えて、貴宏が父親への愛を告げるたびに紘弥は黙り込んでいた。

貴宏の身体をなるべく揺らさないように丁寧にソファーへ横たえる。
此処までされて尚、貴宏がこの家に留まる理由。
出て行ってほしくないけれど、意識を失うほどに堪えているのも見ていたくない。

貴宏にあるのはきっと父親への恐怖心。
愛を口にしなくなったのは、きっと恐怖心に支配されたから。
それなのに貴宏はこの家に居てくれる。
もしかしたら、出て行かないでと紘弥が願った所為もあるかもしれない。
だけどそれも何時まで堪えられるか。
紘弥を捨てた母親のように、貴宏も堪えられなくなって、その内ひっそりと出て行くんじゃないか。



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