小説という名の日記C(栞機能無し)
8
突きつけられた現実。
たまらず晶は泣き出した。
声を上げて大泣きした。
晶の恋人はもう何処にもいない。
交通事故だった。
訃報も届いた。
通夜にも出席した。
葬式にも出席した。
だけど信じられなかった。
英が居ないなんて信じたくなかった。
司が現実を突きつけなければ、ずっと目を背けていられたのに。
司が英の携帯を持ち歩かなければ、今も英が生きていると思い込んでいられたのに。
晶の世界が呆気なく崩れる。
酷い。酷い。
責めるように泣きじゃくる晶を、司が痛ましげに見つめていた。
司は一言も謝らなかった。
涙が涸れて泣き止むまで、ずっと傍で晶を見守っていた。
晶の嗚咽が小さくなった頃、打って変わった静かな声で司が告げる。
兄貴が死んでからも毎日メールが届いてたんだ。
司の独白を晶はしゃくりあげながら聞いていた。
まるで兄貴が生きてるかのような内容で。
送ってくるのは何時も同じ名前だった。
兄貴の携帯にも一人の人物がいて。
写メの人物とメールの送り主が同一人物だと気付いた。
だから携帯を解約するって言う親を引き留めて、俺が携帯を預かった。
それから毎日送られてくるメールを全部チェックした。
何処かで見たことのある顔だと思って、メールを見ながら考えて。
通夜にも葬式にも来てた奴だって、漸く思い出した。
だったら何でこんなメールを送ってくるんだろう。
兄貴が死んだって知ってるのに、何で生きてるかのようなメールを送ってくるんだろう。
そんな事を考えてる内に、気付けばずっとそのメールの送り主のことばかり考えるようになってた。
兄貴の死を認められないんだって結論は出たけど、その時にはもう、メールの送り主は俺にとって気になる存在になっていた。
そんな時に、晶を図書室で見かけたんだ。
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