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小説という名の日記@(栞機能無し)
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その時一瞬過ぎった存在

交わし合う二人の笑顔

底から救った自分以外の誰か



回そうとした腕は力なく下がりシーツを握り締めた

しわくちゃになったシーツに縋って快感に身を委ねた



「俺にしがみつけ」

祐輔がシーツから指を一本ずつ外していく

けれど背中に回させた腕は直ぐに下ろされた

一瞬揺らめいた眼差しに気付かない振りをして、快感だけを追い求めた



急に律動が早くなった

激しさを増し祐輔が欲する儘に腰を動かす

暖房が点いてない部屋で、激しく動く額にじんわりと汗が浮かんでいた

呻きと共に最奥を大きく穿ち祐輔が達した

シーツに縋りながら愁も二度目の絶頂を迎えた



二人、息が落ち着いた頃、何も言わず体を抱え上げられた

その儘風呂場へと連れて行かれ体を洗われる

自分で洗うと断っても聞かず祐輔が洗った

精を受け入れた後孔も綺麗に洗われた

自分の体をざっと流した後、祐輔は出て行った



その後ろ姿を愁は扉が閉まるまでずっと見ていた

祐輔が嘔吐しなかった














それから祐輔は度々愁を抱くようになった

抱かれるのは何時も愁の部屋だった

閉じ籠もるように戻る愁を追い掛けるように、祐輔は部屋に入ってきた

けれど怒っている様子はなく、乱暴な面も荒々しさもみられなかった

丸で恋人同士のように優しく温かく、時には情熱的に

丸で本当の恋人であるかの様な抱き方だった

抱かれた後は必ず風呂場まで抱き抱えられ、愁の体は毎回祐輔の手によって洗われた



恋人の様に抱かれるそのたびに、愁が感じるのは―――罪悪感だった

常に頭の片隅に笑い合う二人が居た










葵とは話さなくなった

何か言いたそうで、それでも話しかけるのを躊躇している様子が傍目から見ても分かった

愁の知らない所で会っているだろう二人、その二人の話題に触れる気力はなく自然と距離があいた

山口も気付いていて、愁には話し掛けてこなくなった















ごめんなさい

ごめんなさい

誰も居ない空間で声にならない謝罪を繰り返した
















それは突然だった



「引っ越すぞ」

アルバイトから帰り食事していた時、祐輔が言った



心臓がドクリと音を立てた





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