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小説という名の日記@(栞機能無し)
18



暫くしてスウェットからラフなシャツに着替えた祐輔が出て来た

「出掛けてくる

晩飯は要らねえ」

鞄から夏休みの宿題を取り出していた愁にそれだけ言って出掛けて行った



1人になった愁は、テレビから流れるゲームの音楽を暫く聞いていた

何度も繰り返し流れる音楽は無機質だった





そしてその夜、祐輔は帰って来なかった












夏休みに入り、祐輔は度々出掛けていた

今までも出掛けていたが、頻度が増えた

帰って来ない日もあった



時々、葵からメールが来た

葵の母親が祐輔を気に入ってしょっちゅう家に呼んでいること

家族の中に祐輔も混ざって御飯を一緒に食べたこと

母親が引き止め祐輔が泊まっていくこと

何の疑問も抱かない葵は、押さえきれない想いを愁にメールすることで発散していた



祐輔は相変わらず何も言わなかった

何処に行くとも誰と会うとも言わなかった

出掛ける時、食事の不要を伝えてくるくらいだった



お盆前に本屋に行った時、葵と歩く祐輔を見た

祐輔の表情までは分からなかったが、葵は嬉しそうに祐輔に話し掛けていた

だいぶ距離もあり、二人とも愁に気付くことはなかった

そしてその日も祐輔は帰って来なかった



葵のメールは楽しそうだった

毎日会っている訳ではないが、母親に押し切られ、よく葵の家に来ると書いてあった

母親への感謝も綴られていた

ぶっきらぼうな祐輔が母親には甘いとの愚痴もあった

どれも祐輔への愛で溢れていた



お盆が過ぎた頃、再び外で祐輔と葵を見た

矢張り葵は楽しそうに笑っていた

腕を組もうとして振り払われても、落ち込むことなく再度チャレンジしていた

チャレンジは実を結び今度は振り払われず、腕を組んだ二人が居た

祐輔が葵に笑い掛けていた



その日、愁はアルバイトを探し始めた



愁のアルバイトは『鈴華』という花屋に決まった

花屋と言っても飲み屋街の真ん中にあり、花だけではなく、女性向けのアクセサリーや小物も置いていた

花やアクセサリーを買い、クラブへと消える男性客が多い店だった

女性連れの男性客も多く、色鮮やかな花とアクセサリーに囲まれた店は繁盛していた

可愛い雰囲気の店は花の配達もしていた



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あきゅろす。
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