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小説という名の日記@(栞機能無し)
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祐輔は何か言いた気な複雑な表情をしていた

言葉を考えているようだった

「何でお前は・・・」

軈て出てきた言葉は続かなかった



「帰ろう」

立ち上がって手を差し出す愁の手を掴み祐輔が立ち上がる

さっきの話題に触れることはもうなかった
















愁の携帯に雅敏から連絡がきた

祐輔には内緒でおいでと言って電話は切れた

食事の途中で帰った日から一週間経っていた



前回とは真逆のこじんまりとした喫茶店

前回と同様に雅敏は既に到着していた



飲み物を尋ねられアイスコーヒーを注文する

雅敏はコーヒーを頼んでいた



苦手意識を押し殺し、雅敏を見た

にこやかな笑みと何を考えているか分からない目が相変わらずだった



「愁君に協力して貰おうと思ってね」

いきなりの出だしがこれで、愁は警戒を強めた

それを雅敏は見抜いたようで、クスリと笑った

「まぁ、そんなに緊張しないで

リラックスして聞いてくれればいいよ

実はこの前の件なんだけどね、君からも祐輔に引っ越しを考えるように言ってくれないかなと思って」


今居るマンションを売り払う、それを聞いて祐輔の様子がおかしくなった

「祐輔は引っ越したがっていません」

「それは生まれた時から住んでるから当然の感情だよ

でもね、考えてもごらん

母親は離婚していないし、父親は別の場所で暮らしている

俺も結婚して妻や子供と暮らしている

家族はもう誰もあのマンションには戻ることはない

祐輔一人が駄々をこねているんじゃないかい

あのマンションは父親名義で祐輔の名義では決してないんだよ」

それでも、例えそうだとしても

「祐輔にとってあそこが家なんでしょ」

説得する気はなかった

祐輔があの家にずっと居たいならそれを拒否する理由はなかった



雅敏は、だけど、と区切った後、ゆっくり息を吐き出した

「君は何故祐輔があのマンションに拘ってるか分かるかい?」


嘗て帰らぬ母親を待ち続けた安アパートの記憶が甦った

あれとは状況が違うのだろうけれど

愁はかぶりを振った







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