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小説という名の日記@(栞機能無し)
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「何で津原匠?それにそんな事してどうなるのよ。」

「単なるゲームだよ。指輪が欲しいんだろ?だったらいいじゃないか。津原匠ってのは・・・まぁ、適当に。」

「分かった。じゃあ約束よ。ちゃんとゲームクリアしたら指輪頂戴ね。陽斗からの指輪だからね。」

「了解。んじゃ頑張って。」



その日、僕は一日中考えた。

島田陽斗が何を考えゲームを始めたのか分からない。
抑、島田陽斗の性格なんて喋った事もない僕に分かる筈もない。
例えゲームでも付き合える筈のない彼女と付き合えるチャンスをくれると言うのなら、振られると分かっていてもそのチャンスに甘えてもいいのではないか。
そう考えるとゲームの対象にされても、これと言って島田陽斗に対する感情は湧いてこなかった。



それよりも彼女はどうだろう。

ゲームとは言え僕と付き合う事に抵抗はないのだろうか。
振られる事が分かっていても、いざ振られたら僕も辛いだろう。
けれど振る立場の彼女はもっと辛くなるのではないだろうか。



考えに考えて、やっぱり彼女の望みを叶えてあげたいと思った。
彼女が指輪が欲しいなら、僕と付き合う事で指輪を貰えるなら、元々彼女が好きな僕には断る理由もない。
例え何時か振られる事が決定している付き合いでも。



だけど彼女は泣いていた。睨みながらも涙を浮かべていた。

彼女が望んだのは指輪だけど、それは恋人の証としての指輪だったんだ。
彼女は陽斗の恋人になりたかったんだ。



ゲームと知っていて付き合ったのは僕。
僕の意思。
だから陽斗が近付いてきた時もその行動を疑った。
疑って心では壁を作って、それでも陽斗と仲良くなったのも僕の意思。

僕は初めから全てを承知していた。



相当無表情なのだろう僕に、陽斗は泣きそうになりながら必死に言い募る。

「匠が好きなんだ。だからどうしても匠に近付きたかった。」

「匠が結衣を好きなの知ってたから、結衣に振られればって。俺が慰めればって。」

こんな必死な陽斗は初めてで。形振り構わず、場所も構わず、こんなに取り乱す陽斗は初めてで。

陽斗が僕を好きなんだという事は痛いほど実感できた。



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