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小説という名の日記@(栞機能無し)
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僕は生まれて初めて手紙を貰った。



今日の放課後、教室で待っててください。木村結衣。



彼女とは何の接点もなかった。
活発で、肩より下辺りに揃えられている髪もさらさらで、清潔感に溢れていて。遠くから見てても可愛い人。
冴えない僕が人気のある彼女と知り合える筈もなく、僕は何時も遠くから見ていた。

彼女の事が好きだった。



そんな彼女からの手紙に、事情はどうあれ心が弾まない筈がない。

放課後、緊張しながら僕は彼女を待っていた。



「待たせてごめんなさい。」

申し訳なさそうに謝る彼女に、僕は慌てて首を振る。

「早速本題に入るね。えとね、津原君が好きなんだけど。よかったら私と付き合ってくれないかな?」



緊張と好きな人からの言葉で、顔が真っ赤になるのが分かった。
今、僕の顔は茹で蛸みたいになってるに違いない。

「ダメかな?」

眉根を下げて彼女が覗き込んでくる。



ヤバい。彼女を困らせた。
緊張のあまり喉がからからな僕に、良い返事が貰えないのではと心配そう。

ぶんぶんと首を振って、ダメじゃないと必死に告げる。

そんな僕を見て彼女は可笑しそうに笑った。



「じゃあ付き合ってくれるのかな?」

「はい、これから宜しくお願いします。」

漸く言えた言葉は同級生に対して使うには相応しくない敬語で、堅苦しいと僕はまた笑われる。

だけどこれは仕方がない。
今まで遠くからしか見ることの出来なかった彼女が目の前に居るのだから。
然も彼女と付き合えることになったんだから。



「匠って呼んでいい?」

いきなりの名前呼び。
何処まで僕は真っ赤になればいいのだろう。

「私の事も名前で呼んでね。」

「結衣ちゃん。」

裏返った声に、彼女はくすくすと笑う。

「匠って面白いね。」



彼女に笑われてばかりだ。
でも彼女の笑顔も好きで、そんな彼女の笑顔が見れた事に、恥ずかしさと嬉しさが綯い交ぜになった。



こうして僕と結衣ちゃんのお付き合いはスタートした。













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