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小説という名の日記@(栞機能無し)
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「一度でいいから、抱かれてみたいんだけど。勿論、朔が俺を抱けるとは思ってない。だからと言って、朔の居ないとこでそんな事したくはない。だから・・・」

とても目を見て話せる話題じゃなかった。
激しく羞恥心を掻き立てる台詞。
意を決して口を開いたけれど、最後まで言い切る事も出来なかった。



涼の好きな人が大輔だと朔は知っている。

只でさえ不快な話題だろう。更に大輔の名前を出せばどうなるか。
良い気分ではないだろう。

矢張り無かった事にしようか。
忘れてくれ、と謝ろうか。

躊躇っていると、見かねたのかそれとも待ち草臥れたのか、意外にも落ち着いた響きの透き通る声が聞こえてきた。



「いいよ。僕も涼が感じる姿を見てみたい。相手は大輔でいいかな?僕から話しておくし。」

それは思ってもみない言葉で。
まさかそんな事を朔が言うとは思ってもみなかった。



断られると思っていた。
あんな突拍子もないこと。

情事に第三者を招くとか。
涼が抱かれてみたいとか。
そんな巫山戯た話を朔なら断ると思っていた。

それなのに断るどころか、涼が感じている姿を見てみたいと言う。
それだけでなく、朔にとっては恋敵となる大輔を自ら指名して。



朔らしからぬ言動。
涼の知る朔ならば言う筈のない言葉。



大輔を指名したのは涼の為かもしれない。
大輔を好きだと知る朔だからこそ、涼の為に大輔を選んだのかもしれない。

チラリと感じた違和感をそう思う事で納得させた。



有り難うと朔に告げる。

楽しみだね。そう返した朔は自然で、にこやかな笑みを浮かべていた。



これで大輔の望みは叶う。
朔が嫌がってない事も何となく感じとれた。

だからこれは喜ぶべき事。
悲しむ者は誰もいない。
これでいいんだ。

そう自分に言い聞かせた。















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あきゅろす。
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