小説という名の日記@(栞機能無し)
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朔に誘われる儘、突き放しもせずセックスするようになってからどれくらい経っただろう。
本当の恋人ならば体位を変えて楽しむくらいはするかもしれない。
けれど矢張り気持ちは伴わず、かと言って拒む事も出来ない儘、単調な、けれど偽善的優しさを持って抱くのが日常となっていた。
大輔とは、相変わらず昼休みに呼び出されては抱かれる日々が続いていた。
「今日、昼休み」
主語も述語もないメール。
それでも涼にとっては大切な一文。
保護されたメールが何件溜まっただろう。
どれも要件だけの必要最低限の同じ語句のメールだったけれど、今回も大切に保護をする。
返す必要もないのかもしれないけれど、分かった、とだけ返信をした。
朔に用事があるから昼は一緒に食べれないと何時もの様に謝る。
一度どんな用事か尋ねられたことがあったが、曖昧に笑って誤魔化してからは、何も聞かなくなり、そうなんだと残念そうに頷くようになった。
今日もまた何時もと変わらず抱かれるのだと思った。
キスさえ与えてくれず、涼の顔を見る事もなく、何時もの様に一切愛の感じられないセックスをするのだと思った。
顔を見ないですむからだろう。
後ろからしか抱かれた事がなかった。
一度だけ、たった一度だけ正面から抱かれた事がある。
あれは、抱き合うとか体を重ねるとか、決してそんな甘いものではなかった。
初めて体が割り裂かれた日だった。
その日は朔が職員室に用事があるからと、昼食が終わった後教室を出ていった。
一人でこれといってする事もなく、本でも読もうと図書室へ向かった時のこと。
偶然向こうから歩いてくる大輔に気が付いた。
朔と付き合いだしてから、少しは喋る事ができるようになった愛しい人。
それでも姿が近付くに連れ、緊張はする。
不自然になっていないだろうか。
自然な態度で声を掛ける事ができるだろうか。
余裕もなく歩くと、大輔が涼に気付き、声を掛けてきた。
「一人?朔ちゃんは?」
「職員室に行きましたよ。」
他愛もない会話に胸を踊らせた。
朔の話題でも話せる事が嬉しかった。
大輔が少しの間考え込む素振りを見せた。
「じゃあちょっと俺に付き合ってくんない?」
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