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小説という名の日記@(栞機能無し)
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予備の傘なんて持ってなかった。
どうしても一つの傘で帰らせたくなかっただけ。

雨足は前よりも強く、一瞬でずぶ濡れになるのは分かっていた。
頭の中の幸せそうに寄り添う二人を追い出したかった。
だから降り止まぬ雨の中、濡れる事も厭わず走って帰った。



その日、ずぶ濡れの格好を母親には呆れられ、弟には笑われた。
元々頑丈だったのか、直ぐに風呂に入ったのが良かったのかは分からないが、その雨が原因で風邪をひく事はなかった。




「本当はお礼を言いたかったんだけど、接点がなくて。ぐずぐずしているうちに何時の間にかタイミングを逃しちゃって、一度タイミングを逃したら声をかけ難くなっちゃって・・・。本当だったら傘も返さなくちゃいけなかったんだろうけど、涼と繋がる物が欲しくて・・・。返さなくていいって言われたから、言葉に甘えて遠慮なくあの傘記念に貰っとこうかなって。今更だけど、あの時は有難う。」



懐かしそうに頬を緩める。

だけど。

ごめん。
そんな思い出になるような品物なんかじゃ決してないんだ。
あれは醜い嫉妬の表れでしかないんだ。

そう言えたらどんなに楽か。



結局、ごめんと謝った。
上手く笑えた心算だったけれど、それは苦笑いにしかならなかったかもしれない。
覚えてないや、と誤魔化した。







あの日、朔に傘をやらなければ今の関係はなかっただろうか。

仲の良い二人の姿を今でも遠くから眺めていただろうか。
大輔に存在も知られない儘、抱かれることもなく、遠くから見詰めるだけだっただろうか。



それでも、朔に傘を渡した結果が今の状況だった。

大輔に抱かれ、そして今日初めて朔を抱いた。

あの日がなければ今がなかった。



一度朔と体を重ねたからには、これからもきっとそれは続くだろう。

それは予想でもなく予感でもなく、確定事項にも似た確信。

これからも大輔に抱かれ、朔を抱く光景が漠然と浮かんでいた。







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あきゅろす。
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