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小説という名の日記@(栞機能無し)
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ペコリと頭を下げたその人は、年上だが二十歳代前半に見えた。可愛らしい顔立ちで、つんけんした感じ悪さはみられない。昨日の流れ作業のナースよりはいいなと言うのが初対面での印象だった。



北山さんは高梨が学校に行くまでは普通に俺にも話し掛けてきた。
おはよう。よく眠れたかな。
子供に話し掛けるような優しい口調で当たり障りのない話をした。

けれど、高梨が学校に出掛け居なくなると、昨日のナース同様、一切喋らなくなった。
黙々と針を抜きオムツを交換する。それは昨日のナースと変わらず流れ作業だった。



「あっ、落ちちゃった。」

何かを落としたらしい。俺の頭側に転がり込んだらしく、俺の直ぐ隣でゆっくり屈みこんでいく。



その時、そっと耳に囁かれた。


「彼が居る時以外、沢井君に話し掛けちゃいけないの。監視カメラと盗聴器があるから喋ったら直ぐバレるのよ。」



何かを拾い終わった彼女はまた直ぐに流れ作業を開始した。



唖然とした。
『彼』が誰を指すのか。考えるまでもなく、一人しか居なかった。
自分の居ない所で話し掛ける事を禁止する高梨に。監視カメラや盗聴器という普通なら必要としない物を使ってまで監視する高梨に。
どうして其処までする必要があるのか聞きたかった。

昨日のナースもきっとそれがあったから流れ作業だったんだろう。そう思ったら納得できた。

北山さんが何故バレる危険を冒してまで教えてくれたのかは分からない。
患者の為に動く看護婦としてのプライドが残っていたのか。余りにもそっけない態度を取りすぎて、俺が可哀想になったのか。
どっちにしろ、少しは患者の事を気に懸けたって訳だ。








視界に入る壁の上。数字と針が見易い大きくて丸い掛け時計がぶら下がっている。
そろそろ高梨が戻ってくる頃だった。

流れるテレビの音声は、詰まらない出来事を垂れ流してたワイドショーから味巡り番組に変わっていた。
釜飯の醍醐味を頻りに語るリポーターがウザい。食う事すら出来ない俺に対して当て擦るように熱弁を奮う。
残念だったな。今の俺には食べたいという意欲すら湧かないんだよ。まあ、湧いてても食えないんだけどな。



一方的にリポーターに喧嘩を売っていると、とうとう扉の開く音がした。

「入って。」

高梨一人じゃないらしい。
誰なんだろう。誰を連れて来たんだ。



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あきゅろす。
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