小説という名の日記@(栞機能無し)
12
最早、意味不明だった。キャパオーバー。恐怖を超えた。
狂ってしまえない自分が悲しかった。
こんな事なら目覚めない方が良かった。
大体、小便だって我慢してたんだ。だけど、我慢しても意思に反して漏れるからオムツも仕方なく許容したんだ。我慢するくらいいいだろ。こんな体になってもまだ羞恥心は残ってるんだよ。漏れる分は仕方なくても、それ以上の恥を晒したくないんだ。
だけどそんな僅かなプライドも許しちゃくれないのか。
こんな生き恥を晒しながら生きていかなきゃならないのか。
此処まで打ちのめされるなら、事故に遭ったらしい時に死んでいた方がよっぽどマシだった。
高梨は俺の思いに気付かない。
目は口ほどにものを言うというけれど、俺の目では幾ら訴えても届かない。
独り善がりな言葉で俺をどんどん傷付けていく。
「さて。そろそろ部屋に戻らないといけないが、よく温まったか?先生とおかあさんと話をしなくちゃならないんだ。」
気の所為じゃなかった筈だ。
おかあさんってのは俺の母さんだよな。
お義母さんって言われた気がしたのは。
真面目な表情で新しいガウンを着せていく高梨。
お前の脳内が分からない・・・
俺を一体どうしたいんだ。
俺なんか要らないってお前が言ったんだろ。
「もしお義母さんがもう来てても、テレビでも見て待ってるだろ。何時来てもいいように鍵を開けっ放しで来たからな。」
俺の入院している部屋は他の病室と違い、特別室だという事を部屋に戻る道程で知った。
高梨の言った通り、部屋に戻ると既に母さんが来ていた。
「お風呂に入ってさっぱりしたのね。良かったわね、敦。高梨君、本当に貴方には感謝してるの。お父様に御無理を言ってこんな部屋まで用意して貰って、面倒まで見て貰って。」
この病院は高梨の親の経営する病院らしかった。
だから高梨が当然の様に部屋に入り浸っても何も言わない。俺の面倒を見る高梨の方がナースより優先される。
そんな高梨に母さんは感謝している。
俺が何をされているのかも知らないで。俺がどんなに嫌な思いをしているのかも知らないで。
「敦は俺にとって何よりも大事な人だから当たり前ですよ。」
「本当に何て友達思いなの。敦もきっと喜んでるわ。」
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