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小説という名の日記@(栞機能無し)
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幼い頃から感情を表現するのが下手だった

根暗、無口、陰気、無表情

どれもこれも陰で囁かれていた言葉

誰からも敬遠されていた僕

他人と接するのも苦手になっていた


そんな僕に話し掛けてきたのがタキだった

つっけんどんに撥ね付けても、幾ら返事をしなくても、何故だかタキは僕の傍に来た

突き放しても来るから、流されるように次第と僕の隣はタキの定位置となった


時々、タキは僕の考えてることが分かるんじゃないかと思うときがある

空腹を感じれば飴が出てきたり、空を見たくなれば屋上へと連れ出されたり


不思議に思ってタキに聞いてみたことがあった

「何で僕の考えてること分かるの?」

タキは端整な顔に乗っかっている眼鏡の縁をクイッっと持ち上げてみせた

青いフレームが端整な顔を更に理知的に見せている

「これを掛けるとサワの考えてることが分かるんだよ」

突拍子もない事を言う

「この眼鏡を掛けると、サワが嫌な顔してても実は照れてるんだなとか、そういう本音が見えてくるんだ」

じっと見詰めてくる真面目な顔

後退った僕を見てニヤリと笑う

「突っ込んでくれなきゃ困るんだけど」

その一言で、有り得ない事だったけど、僕はほっとした


実はタキの眼鏡に度が入ってないことを知っている

以前、何かの会話でそういう話をしたから

伊達だと確か言っていた


眼鏡を掛けなくてもタキは十分格好良い

だから、絶対有り得ない事だけど、もしかしたら心を見る眼鏡は本当なのではないか、なんて、馬鹿な思いが一瞬過ぎった




      


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あきゅろす。
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