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小説という名の日記B(栞機能無し)
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陽也から電話がくるようになったのは嬉しいが、なるべく泰造から掛けるようにした。
携帯電話の料金は固定電話同士より高いらしい。
泰造なら余裕で払える額でも、学生の陽也には厳しいかもしれない。

毎日陽也と話している。
泰造から掛ける度に、掛け直そうかと陽也が遠慮がちに申し出てくる。

友達が出来て嬉しい。
だから俺から掛けている。
迷惑でなければ、掛ける楽しみを奪わないでくれないか。

態と悲しそうに言えば、それからは陽也も何も言わなくなった。
学校に行ってない、働いてもいない泰造の気持ちを汲んでくれたようだった。



ガーベラが花を咲かす時期は終わりを迎えている。
まだ昼間は外で十分に過ごせる季節。
夜は肌寒く、もう夜空を見上げるには適さない。
年老いた体でなければ、まだ縁側に出て夜空を見上げる事も出来るが、乾燥した肌に夜風は厳しい。

だから最近は空っぽの写真立てを見ながら夜を過ごすことも多かった。
何も入ってない写真立て。
それは連絡先を入れる写真立てを買いに行った時に、一緒に買ったものだった。



陽也の写真を入れて眺める事が出来たならどんなに幸せだろう。
友達になれただけで十分だと言うのに、少しずつ欲が増えていく。
友達になって電話もするようになった。
そうしたら新たな望みがわいてきた。

冬になれば外は厳しい。
陽也に会えるなら厳しくても平気だが、陽也が寒さに弱いとも限らない。

泰造の家に遊びに来てもらえれば一番良いが、それは絶対に出来ない。
ならば冬になる前に写真を撮らせて貰おう。
そうすれば多少会えなくても我慢出来そうな気がする。





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