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小説という名の日記B(栞機能無し)
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一年。一年で陽也への想いを昇華しようと思う。
その為に神はきっと泰造を若返らせてくれた。

込み上げてくる嬉しさを抑えきれず、口許を緩めながら自分の名を告げる。

「津金泰造。泰造でいい」

「俺より年上だよね?」

「そうだが、陽也君とそれ程違ってないと思う」

「俺、十五。高一。泰造さんは?」

「俺は十七。高校は行ってない。訳があって知り合いの家に世話になってる」



泰造が事前に考えていた設定。
アルバムを引き出して若返った顔と同じ顔を探せば、十七、八の頃の顔だった。
今の時代の高校がどういった学習をしているか分からず、高校生ではないという事にした。

自分の名前を言っても、老いた肉体の泰造と今の若い肉体の泰造は結び付くまい。
抑、性は教えたが名は教えてない。
案の定、陽也は気付いてない。

「じゃあさ、携帯持ってる?」

「いや、持ってないんだ」

「うーん、じゃあどうやって連絡する?」



連絡の手段なら家に電話がある。
一人暮らしなのだから、勿論泰造しか出ない。
薬の効力が切れて声が違っていても、電話なら何とでも誤魔化せる。

「知り合いの家に掛けて貰えれば俺が出るから」

「え?知り合いの人は?」

「人付き合いが嫌いで電話にも滅多に出ないんだ」

無理矢理な設定だとは思ったが、連絡先交換を忘れていたから仕方がない。
今まで陰から見守ってきていたのだ。
陽也から連絡先を求められるとは思ってもいなかった。





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あきゅろす。
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