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小説という名の日記B(栞機能無し)
28


少しでも早く会いに行きたい。
陽也と会って友達になってもらおう。
偶然の出会いを装って親しくなればいい。

今直ぐにでも会いに行きたかったが、どうやって親しくなればいいかなかなか良い案が浮かばず、結局その薬を使ったのは一週間後だった。

学校の校門を陰から眺める。
陽也が出て来るのを今か今かと待っていた。

肉体が若いだけあって息切れも起こさない。
走っても体が軽い。
これなら陽也と会っても同い年に見える。

校門から出て来た陽也を走って追い掛けた。



「すみません」

呼び掛けに気付かず歩いていく陽也に追い付いて、もう一度「すみません」と声を掛け肩を叩いた。
久し振りに間近で見る顔に胸が高鳴る。

「鹿沼陽也君だよね?」

「そうだけど・・・?」

不思議そうな顔が泰造を見た。
泰造だと気付いてない。
知らない人が話し掛けてきたと単純に思っている。

「これを預かったんだけど」

そう言って、ピンクの封筒を渡した。



「これは?」

首を傾げながらも封筒を受け取ってくれる。

その封筒の中身には泰造の心が書いてあった。
だがそれと気付かれないようにしてある。
好きですと一言だけしたためた手紙。

「知らない女子から渡してくれって頼まれたんだ。その子は引っ越すそうで、手紙だけでも渡したいと言っていた。きっと恋文ではないかな」

「恋文・・・」

怪訝な顔をして陽也が泰造を見た。



偶然の出会いを考えて思い付いたのがこれだった。
我ながら名案だと思う。
偶然出会った女子からの手紙を預かって、それを陽也に渡す。
そうすれば陽也の名前を泰造が知っていても不自然ではない。

だが陽也の視線が、手紙と泰造を往復している。
計画が失敗したのかと不安になった。

「恋文・・・」

再び繰り返した陽也の口許が緩む。
そして「ありがとう」と泰造に告げた。





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あきゅろす。
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